今日は女性同士の友情をテーマにした漫画作品をまとめました。
好きなテーマではあるんですがなかなかヒットするものがないので集めるのが大変なんですよね。では以下からどうぞ。
- 彼氏もいないし色気もないけど、友達と楽しく暮らしています『まるごと腐女子のつづ井さん』
- 迷宮世界で女同士のバディが探検する『百万畳ラビリンス』
- 「足りない」中学生たちの優しく痛い青春『ちーちゃんはちょっと足りない』
- 日本とサウジの女の子がアメリカでルームシェア『サトコとナダ』
- 60歳になった女の幼馴染三人組が同居を始める『ルームメイツ』
彼氏もいないし色気もないけど、友達と楽しく暮らしています『まるごと腐女子のつづ井さん』
友人たちと楽しく暮らす腐女子、つづ井さん。大学から社会人にかけて、彼女のおかしな日常をコミックエッセイとして描く。彼氏がいない、色気もない、でも幸せ。現代のシスターフッドとは……。
このシリーズのいいところは、オタク生活の楽しさを描きつつも、オタクではない人に対するマウントがないところなんですよね。
オタクのエッセイって自虐か自慢かになりがちで、でもつづ井さんシリーズはそれを丁寧に回避しています。
「腐女子」とタイトルについてはいるものの、この漫画は著者が「腐女子」だから素晴らしいのではなく、人生を楽しんでいるから面白いんですよね。
腐女子であることはオマケみたいなものだと思います。
あと世の中の腐女子がみんなこんな生活しているわけじゃないから……。(当たり前)
迷宮世界で女同士のバディが探検する『百万畳ラビリンス』
人と関わるのが苦手でゲームばかりしていた礼香は、友人の庸子とともに不思議な世界に迷い込んでしまう。いくつもの部屋が連なり、謎の法則でできている世界を、礼香は持ち前の行動力と洞察力で攻略していく。どうやらこの世界には、人類の命運がかかわっているようで……。
最高の同性バディものでした。天才的なゲームのセンスを持ちながら、社会に溶け込めず生きづらさを抱えている礼香と、向こう見ずな礼香を心配し寄り添おうとする庸子。このふたりがタッグを組んで不思議な世界を攻略していくのが熱いです。
礼香はこの迷宮世界の攻略、庸子は自分の恋人や日常と、それぞれ相手とは別の大切なものを持っているところも「友情もの」として素晴らしいです。女ふたりの物語でありながら、関係が閉じていきません。
読み進めるほどに混沌としていた迷宮のルールがわかってきて、主人公たちが自在に動けるようになるのが面白かったです。
礼香がめちゃくちゃ頭のいいキャラなので、攻略がさくさく進み読んでいて退屈しません。上下巻とは思えないくらい中身が濃い作品です。
「足りない」中学生たちの優しく痛い青春『ちーちゃんはちょっと足りない』
中学生のちーちゃんは、おバカだけれど友人と楽しく暮らしている。友人のひとり、ナツもちーちゃんが好きだ。しかし、女子バスケ部が顧問の誕生日プレゼントを買うために集めていたお金がなくなった。その事件をきっかけにナツとちーちゃんの関係は狂い始める。
主人公のちーちゃんは頭はよくないものの天真爛漫で、周りの友人は彼女を大切に思っています。その優しさが心地よかったです。
しかし心地いいだけで終わらないのがこの作品。思春期特有の「愚かさ」が、友情の歯車を狂わせ始めます。
タイトルでは「ちーちゃんが」足りないということになっていますが、本当に「足りない」のはナツだった。お金が足りない、考えが足りない、知性が足りない、倫理が足りない。でもそこを踏まえたうえで、少し希望のある結末を迎えてくれてほっとしました。
日本とサウジの女の子がアメリカでルームシェア『サトコとナダ』
アメリカに留学したサトコは、サウジアラビアから来たナダとルームメイトになる。ムスリマであるナダとの暮らしは発見がいっぱい。そんな中、ナダは親が決めた相手と結婚をしなければならないらしく、悩み始める。
女性に自由がないサウジアラビア。祖国を愛する気持ちと、もっと自由に生きてみたいという葛藤を抱えているナダは見ていて苦しかったです。でもナダは強くて前向きで、自分自身を愛している。そのポジティブさはかっこよかったです。
一方のサトコは、日本で抑圧していた気持ちを、ナダやアメリカの友人と接する過程でどんどん出すようになっていきます。「わたし」というものを確立していくサトコの成長は見ていて勇気づけられました。
異文化交流や自己と生まれ育った国とのギャップ、テーマ自体ははっきりしていますが、決して押しつけがましくないところもよかったです。あくまで淡々としているところに逆にこだわりを感じます。
60歳になった女の幼馴染三人組が同居を始める『ルームメイツ』
働きづめで結婚できなかった女、結婚生活が嫌になって逃げだした女、妻子ある男の愛人として生きた女。幼馴染である彼女らは60歳になり、思い立って同居を始める。自らのこれまでの人生を振り返りながら、新しい出会いや別れを経て老年の日々を過ごす。
まず友達同士のルームシェアものって「いつまでも一緒だよ」という流れになりがちだと思うんですが、この作品では自然な形でルームシェアから出ていくキャラクターがいます。彼女に対して他のふたりもそれなりに葛藤を持ちつつ、部屋を出ていくことを受け入れます。
血のつながらない人間同士の連帯を描きながら、その連帯も絶対ではない。この温度感が絶妙でしたね。
その他にも徐々に妻からの離婚を受け入れていく夫、仕事に夢中でいたかったけれど子どもを持つことを決断した女性など、「変化すること」がこの作品のテーマになっています。
60歳になり、永遠などないのだとしみじみ感じる時期になって、人生に迷い、また決断をする三人組の姿には励まされました。
以上です。興味があれば読んでみてください。