あらすじ・概要
個人や企業が金銭を儲けると、その一部を税金として納めなければならない。しかしその納税を回避し、社会に富を還元しない人たちがいる。その裏に存在するのはタックス・ヘイブンと呼ばれる租税回避が可能な地域。著者は税務署で働いた経験から、その問題点を指摘する。
不景気や通貨危機が起こるのは個人の責任じゃないなこりゃ
税金の軽い地域に居住したり、お金を経由させたりすることによって、税金を払うことを免れる「租税回避」。著者は税務署の官僚として、租税回避と実際に戦い、その経験からこの本を書きました。
どれだけお金を稼ごうと、どれだけ地位や名誉を得ようと、「税金を払いたくない」という願望からは逃れられないのだと思うと悲しいというよりちょっと面白くなります。優秀で理知的なふるまいをしているあの社長も、社会的な活動をしているアーティストも、税金というものの前では愚かになります。
タックス・ヘイブンへの規制もそうだけど、「税金を払っている金持ちはえらい」という雰囲気を作るのも大事なのではないか、という気がします。
そして、「税金を払いたくない」という願望が、国際政治を動かし、搾取する側とされる側の関係を固定することに一役買っています。著者のタックス・ヘイブンへの怒りももっともなもので、真面目に税金を納め生活している一般市民が損をする構造になっています。
一方で、私は金勘定が苦手なので租税回避のしくみや金融機関によるマネーゲームのくだりはよくわからない部分が多かったです。この辺はお金に強い人じゃないと難しいかも……。
ただわかるところだけでも十分面白かったですし、世の中の不景気や通貨危機は自分に責任がないんだ! と思うとちょっと気楽になりました。
余談ですが、途中まで作者のことを女性だと思っていました。名前はそのものずばり「さくら」と読むらしいです。