ブックワームのひとりごと

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採集や狩猟をして暮らし、のちに迫害された北海道の先住民たち―時空旅人編集部『今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人の歴史と文化』

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今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人々の歴史と文化 サンエイ新書

 

あらすじ・概要

かつて東北から北海道、樺太や千島列島にかけて暮らしていた民族、アイヌ。北の大地で、狩猟と採集の生活をしていた人々とは……。その宗教観や、食べ物や着るものなどの文化、そして日本との歴史を一冊にまとめた本。

 

日本に似ているようでがっつり違う宗教観・霊魂観

北海道の冬の寒さからなんとなく厳しい暮らしを想像していたのですが、開拓前の北海道は狩猟できる獣も食べられる野生動物も豊富で、あまり食べるのには困らなかったようです。美化しているところはあるかもしれませんが、狩猟生活=貧しいというものでもないんですね。

 

アイヌ文化は万物に霊が宿るというアミニズム的な価値観は日本と同じですが、霊魂観や死生観はかなり違います。生と死をシームレスにとらえており、死んでももうひとつの別の世界に行くだけという思想だったみたいです。

そして生き物も人間も、魂が衣服のように体をかぶっているに過ぎないと考えます。

私はスピリチュアルなものはあまり信じないたちですが、こういう生と死が地続きになっている価値観はちょっと生きるのが楽そうでいいなと思います。

 

ダイジェストではありますが、日本とアイヌ民族の関係史についても書かれています。

ずっと虐げられていた民族……というより迫害や支配が強くなったのは江戸時代から明治にかけてのようです。

幕末の探検家で北海道の名付けの親、松浦武四郎はアイヌ文化の保護を訴えていたというのも知らない情報でした。北海道の「カイ」はアイヌ語から考えたそうです。

今でもアイヌをルーツとする人はいますが、生まれたときからアイヌの文化に漬かっていた人は、ほとんどいなくなっています。

歴史にもしもはないけれど、アイヌ文化のコミュニティが維持されたまま近代化していたらどうなっていただろう、と考えてしまいますね。