ブックワームのひとりごと

読書中心に好きなものの話をするブログです。内容の転載はお断りします。

文化

『ものいわぬ農民』大牟羅良 岩波新書 感想

あらすじ・概要 戦後の日本、岩手で行商人をやっていた著者は、そこで農民たちの困窮や、独特の文化、閉鎖的な社会での悩み事を知る。岩手の人々のために役立ちたいと思いながら、インテリ層として人々との距離感に悩む。当時もっとも乳児の死亡率が高かった…

『女たちの韓流――韓流ドラマを読み解く』山下英愛 岩波新書 感想

あらすじ・概要 韓国ドラマのストーリーには、フェミニズムやジェンダー観の変遷が現れている。韓流ドラマの大ファンの著者が、韓流ドラマの歴史を追いながら、韓国の女性たちにとっての韓流ドラマを語る。 生き生きとした韓国ドラマとジェンダーの批評 何よ…

【文化人類学者がろう者の世界に飛び込んだら違いだらけだった】亀井伸考『手話の世界を訪ねよう』感想

あらすじ・概要 ろう者の世界を想像するときに、つい「聞こえなくてかわいそう」という思考になってしまう。しかし著者がろう者の世界に飛び込んだところ、そこでは豊かなコミュニケーションがなされていた。ろう者のための言語、手話を紹介しつつ、健常者と…

【「東洋一」を目指した図書館の歴史と、「何のために本を集めるか」問題の変遷】長尾宗典『帝国図書館――近代日本の「知」の物語』

あらすじ・概要 「東洋一」を目指して作られた日本の帝国図書館。しかし、その歴史は平坦なものではなかった。図書を買う金銭が不足していた時期、マナーの悪い利用者、そして太平洋戦争中の略奪と検閲。悪い面もある歴史とともに、帝国図書館と日本の図書館…

採集や狩猟をして暮らし、のちに迫害された北海道の先住民たち―時空旅人編集部『今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人の歴史と文化』

あらすじ・概要 かつて東北から北海道、樺太や千島列島にかけて暮らしていた民族、アイヌ。北の大地で、狩猟と採集の生活をしていた人々とは……。その宗教観や、食べ物や着るものなどの文化、そして日本との歴史を一冊にまとめた本。 日本に似ているようでが…

能の話より認知症の母の国際的介護問題のほうが面白い―梅若マドレーヌ『レバノンから来た能楽師の妻』

あらすじ・概要 レバノン内戦ゆえに故郷を離れ、学生をしていた著者はあるとき能楽師の息子と出会う。彼と結婚することになった著者は、能楽における古いしきたりや価値観に戸惑いつつも夫を支える。夫は著者とともに、新しい能楽のスタイルを表現するため活…

限界ビジネスウーマンが直島に移住してカフェ店員になりました―まつざきしおり『直島古民家シェア暮らし』

あらすじ・概要 都会の生活に疲れ、瀬戸内海の憧れの島、直島に移住してきた著者。地元のカフェでアルバイトをしながら古民家で生活をしていく。同じアルバイト仲間のなっちも同居することになり、自然と食べ物が豊かな島で、おんぼろ家屋で工夫しながら毎日…

個性的な温泉浴衣を追って各地の温泉街を歩く―スタジオクゥ『温泉浴衣をめぐる旅』

あらすじ・概要 イラストレーターふたりのユニットスタジオクゥは、温泉浴衣にほれ込み、面白い柄の温泉浴衣を探して各地を巡ることにした。文字、動物、人物など、さまざまな題材で描かれた温泉浴衣の柄を紹介しつつ、各地の温泉地の見どころを見ていく。そ…

人種差別のシンボルとなってしまったカエルを救えるか―『フィールズ・グッド・マン』

あらすじ・概要 マット・フューリーは自分のぐだぐだな日常を元ネタに、漫画を描いていた。そこに登場するカエルのペペは、匿名掲示板4chanに転載され、ネットミームとして独り歩きを始める。ただの面白ネタからモテない男の代弁者へ、そして、人種差別の象…

実は多種多様だったニッポンの「結婚」―瀬川清子『婚姻覚書』

今日の更新は、瀬川清子『婚姻覚書』です。 あらすじ・概要 日本における結婚とは何か。著者は日本の各地から結婚に関する文化、習俗、風習を収集。男が娘の家に通うもの、娘が男の家に通うもの、嫁の一時的な里帰りや、かまど神との関係などなど。婚姻制度…

ビルマとは何か、そこで日本は何をしたのか―田辺寿夫『ビルマ 「発展」のなかの人びと』

ちょっとお久しぶりです。旅行に行っていました。その話は機会があれば書くとして。 今日の更新は、田辺寿夫『ビルマ 「発展」の中の人びと』です。 あらすじ・書籍概要 かつて第二次世界大戦で戦地になり、今は軍事政権が支配しているビルマ(ミャンマー)…

「温まりたい」という欲求から生まれた暖房の歴史 ローレンス・ライト『暖房の文化史 火を手なずける知恵と工夫』感想

『森薫拾遺集』に参考文献として載っていたもの。 honkuimusi.hatenablog.com 書籍概要 人間が寒さから逃れるために作り出した「暖房」。たき火から暖炉、ストーブ、薪から化石燃料へと、テクノロジーの進歩によってそのしくみは変わっていく。暖房から人類…

逃れがたい人種差別という呪いと、それでも残る希望 『クラッシュ』感想

dtvにあるおすすめ映画記事にあった作品です。 あらすじ 商店を経営しているイラン人、札付きのワルである黒人青年、テレビドラマの脚本家をしている男とその妻……などなど。ひとつの事故をきっかけに、それぞれの運命がリンクしていく群像劇。

わからないけれどわかろうとしたい異文化 青木保『異文化理解』感想

久しぶりに新書が買いたくなって楽天koboで買いました。岩波新書は信頼感があっていいです。 書籍概要 世界中がグローバル化しつづける現代。それと同時に、文化の違いが争いを招いている。文化人類学者の著者が、他の文化を理解するためにどうすればいいの…

昭和初期の少女たちのめくるめく手紙世界 北島郁・山田俊幸編『カワイイ! 少女お手紙道具のデザイン』感想

いい意味で思ったのとは違う本でした。刺激的だった。 書籍概要 メールやネットがない時代、昭和初期の女学生の手紙は活発にやりとりされていた。孫が保存していた手紙道具や本文を、本の形にして紹介。その知られざる文化とは……。