あらすじ・概要
「僕」こと堀川と松倉は、図書委員の高校生。堀川は、松倉と一緒に学校や町で起こる小さな謎を解いていくこととなる。開かずの金庫の鍵を開け、自殺した学生が読んでいた本を探すなどするうちに、堀川は松倉の態度に違和感を持つ。やがて松倉の抱えている謎を知ったとき、堀川は……。
友達だけれど何もしてあげられない葛藤
さらっと読み終わるつもりが、終盤にかけて高濃度の「友達」をぶつけられて震えてしまいました。
「僕」こと堀川と、松倉は図書委員同士の友人です。堀川と松倉は、身の回りで起きた事件を解決していきます。
その課程で、松倉はどうやら倫理観がおかしいところが露になってきます。そして終盤、松倉の身の上が明かされるとき、堀川と松倉のどうしようもない違いと、それでも取り返しのつかないことはしないでほしい、という堀川の願いが描かれます。
堀川と松倉はたまたま出会っただけの友人で、お互いに責任があるわけではないのですが、それでもこちら側に止まってほしい、という思いに共感するところがありました。
私も昔の友人がおかしな思想にハマってしまったり、仕事が激務過ぎて周りを見下すようになってしまったりしたことがあります。それに対して何ができるわけでもないのですが、こちら側に止まってほしかったとどうしても思ってしまいます。
松倉が止まったどうかはここでは書きませんが、縁の切れた自分の友達のことを思い出して切なくなってしまいました。
ミステリとしては、「ない本」の回が好きでした。自殺してしまった生徒をめぐるやりとりが、やるせなさとそれでもあがきたいという友人の気持ちを表していました。終盤の内容にも関わってくる重要な短編でしたね。
読み終わってみるとしみじみ「友達」の話だったなあと感慨深くなる作品でした。