あらすじ・概要
ウクライナへの侵略によって、「プーチン帝国」と独裁国家として語られるようになったロシア。そこで日常を過ごす国民たちはどんな暮らしをしているのか。軍事学者である著者は、自身のロシアでの生活を振り返りながら、ロシアに生きる人々の文化や生活を語る。
ウクライナへの侵攻は批判しつつ、過度な偏見を抱かせない
ロシアの文化や生活を描きつつ、読者に過度にロシアへの偏見を抱かせないよう気をつけて作られた本でした。
ロシア人のドライさと情の厚さが混在するところ、冷たいときは冷たいけれど、助けてくれるときは全力で助けてくれるところは不思議な感じがします。
また、強権的な支配者を求める一方で、突然ひねくれた行動を取ったり、あえて人のいうことを聞かなかったりするのは面白いです。
また、ロシアは多民族国家であり、中央アジアの民、他のルーシ系国家からなどロシアの人もよその民族に影響を受けながら暮らしています。混血層も多いので、どこからどこまでロシア人なのかもあいまいなところがあります。
しかし、何度も国の主権を脅かされたことから、ロシア帝国の幻想にすがらなければならないのがせちがらいですね。
著者はロシアのウクライナ侵攻には一貫して否定的な立場ですし、プーチン政権を選んだロシア人に責任がないとはいいません。しかし口述筆記で書いてもらった原稿を見て「これではロシアはまるでエイリアンの国ではないか」と自ら原稿を書き直します。
私だってウクライナ侵攻はろくでもないと思っていますが、人間の中のあいまいで白黒つけられない部分を忘れないでいたいと思います。