ブックワームのひとりごと

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【ヤングケアラーとなった少年の苦しみと後悔】美齊津康弘・吉田美紀子『48歳で認知症になった母』感想

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48歳で認知症になった母 (コミックエッセイ)

 

あらすじ・概要

ある日から、母親の様子がおかしくなった。徘徊したり、一日中ひとりごとを言ったり。アルツハイマー型認知症と診断された母は、有効な治療法もなく、どんどん悪くなる一方だった。著者は徘徊する母を連れ戻したり、排泄の片づけをするうちに、疲弊していく。

 

親を愛するからこそ憎いと思ってしまうのがつらい

若くして認知症になってしまった親の介護もそうですが、自分を困らせる親を憎んでしまう気持ち、そして「病気だから仕方ないのに、親を憎んでしまうなんて」と自分を責める気持ちの間で揺れ動く少年が痛々しかったです。

認知症になってしまった母親を支えていたのは父でしたが、父の目の届かない部分では著者が母親のサポートをせざるをえませんでした。引っ越す前の家に帰ろうとして何度も連れ戻されたり、まともにトイレにも行けなくなって排泄物をそのあたりに置きっぱなしにしたり。

母親を愛するからこそ、どんどんできないことが増えていく母親を受け入れられず、苦悩する著者を見ていると心が重くなります。

 

大人になった著者は、一般企業で働いた後、福祉の仕事に就きます。母も亡くなってだいぶ経ち、改めて周囲の人の感情を聞く機会を得ました。

母親につらく当たっていたけれど、同時に母親の奇行をなかなか受け入れられなかった叔母、部屋に閉じこもって母親を見ないようにしていた兄、自分の家庭の家事で精一杯で母親の介護にほとんど参加できなかった姉。

誰も悪くないからこそ、親の病気で家庭が険悪な状況になってしまうのは悲しいです。こういう状況があるから、福祉の制度は大事です。私もこのような漫画を紹介して、少しでも家族の負担を軽減させる助けになりたいと思います。