あらすじ・概要
日本史を研究していた著者は、各地方から借用した古文書が借りたまま返せていないことから、古文書返却の旅に出る。著者は各地を回り、不義理を謝罪しながら、学者の地元民への軽視を考える。日本史研究の負の側面を伝える新書。
研究者の後悔が面白い
一齣って何て読むんだろうと思ったら「ひとこま」でした。
学術的な話というよりエッセイですが、それだけに著者の後悔、やらなきゃよかったという感覚が伝わってきて、考えさせられました。
学者はどうしてもアカデミックな話を書かなければならないので、学者の個人的な後悔を知ることは少ないです。だからこそ面白かったです。
古文書返却をおろそかにしてきた理由には、「研究してやっている」という学者特有の驕りがありました。土地の人を研究に協力させておきながら、古文書を返却しないという不義理。著者が自分の不義理に向き合い、各地を旅していくのは印象的でした。
ほとんどの場合、著者が古文書を返しに来ると土地の人は素直に喜んでくれていました。現代だともっと怒る人が多かったかもしれません。
また、古文書返却によって新しい文献が見つかり、日本史における研究の進歩もありました。地元の人との対等でフレンドリーな関係を維持することによって、研究もはかどるのだなと思いました。
他でなかなか見ないテーマで面白かったです。