あらすじ・概要
貧乏だけれど学問に焦がれるダンピアは、私掠船に乗って旅をしている。船では保存食が乏しい。したがってその土地で入手した動植物を調理し、食べた。やがてダンピアの旅路は、波乱万丈なものとなる。
憧れと倫理のなさが共存する大航海時代が美しく恐ろしい
絵柄は児童向けのようなかわいらしくデフォルメの効いたものですが、内容はシビアでした。
私略船とは、当時のイギリス政府によって略奪、つまり海賊行為を許されていた船のことです。ダンピアにとっては知識を得るための旅路でも、暴力と隣り合わせです。
ダンピアは学問に焦がれ、世界を知りたいと望みますが、それは先住民の排斥と表裏一体です。作中でも、先住民がひどい目に合うシーンがたくさん出てきます。
外の世界を見たい、知りたいと望んだことが、必ずしもよい結果を生まないところはせちがらいです。
ダンピアはかっこいいと思うところもありますが、仕事を黙ってバックレる等図々しくわがままなところもあります。そこが人間味があってよかったです。
また、世界史をやっていないとわからない小ネタ、あるある、ジョークなどが大量に詰め込まれているところもよかったです。
作品のところどころにコラムが挟まれ、世界史の知識を得ることができます。
また、巻末には参考文献もリストアップされているので、気になる人は読んでみるといいでしょう。
しかし面白かっただけに、最後はいい話っぽく終わったのは残念でした。特に、ダンピアが最低最悪のことをした後にあのエンドはひどいです。
もちろん作者に当時の人権意識のなさを肯定するつもりはなかったと思いますが、逆に後味が悪くなりました。