あらすじ・概要
著者が福島に暮らす人たちにインタビューを行い、東日本大震災後の福島の姿を描く。農業や漁業のこと、子育てのことなど、放射能に振り回される福島の人たち。原発事故は、確かに日常を変化させてしまった。
東日本大震災後の福島県の人たちの葛藤と希望
自分がどれだけ福島県について知らないか重い知らされる漫画でした。こういう人々のリアルな感情は、知ろうとしなければたどり着けないのだと思います。
登場する福島の人々の思いはさまざまです。もう福島は安全だと思う人、放射能の被害を恐れて県外に逃れた人。
福島を出た人ですら、かつての故郷のことを考えて葛藤し、罪悪感を覚えています。
また、『ふくしまノート』は数年単位で描かれたシリーズです。それゆえに連載中に福島の人たちの価値観が変わっています。放射能が怖い、よくわからないという状態から、次第に放射能のことは話してはいけない雰囲気になっているようです。
もちろんデマはよくないですが、放射能のことが禁句になってしまうのはもっと恐ろしいです。自由な議論が許されて初めて知識は価値が出てくるのだと思います。放射能の研究にも影響が出てしまいそうです。
未来へ希望を持ちたいという気持ち、それでも存在する絶望や痛み、ふたつの心で揺れ動く被災者たちの物語でした。
あまりにせきららな感情を描いているので、引いてしまう部分もあります。会津の人の震災への思いや、子どもを持つことへの価値観もそうです。
しかし、こういう形での本でしか「そう考えてしまう人もいる」と思えなかっただろうので、あまり悪くは言えないです。