あらすじ・概要
2000年6月に噴火した三宅島。住民たちは、どのようにして全島避難に至ったのか。噴火直後の混乱や、行政の不手際、住民同士の反発、そして避難後の生活をコンパクトにまとめる。ケアワーカーの人が三宅島噴火の姿を描く。
近いようで遠い、東京の離島での噴火記録が生々しい
三宅島噴火についてよく知らなかったので、新鮮な内容で面白かったです。
東京都に属する離島のひとつ、三宅島での噴火について、現地にいたケアワーカーの人の視点で説明してくれます。
印象的だったのが行政の対応が後手後手に回り、住民に先んじた判断ができなかったことです。防災訓練はやっていたのに、いざとなったら頼りになりません。全島避難の決断に至るまでも迷走しています。
どれだけ訓練をしていても、実際に頼りになるかはそのときになってみないとわからないのですね。
庭木に降ってきた大量の灰を棒で叩き落したり、爆発的な噴火の瞬間に出会ったり、現地の人でないと語れない火山のすさまじさも語られていました。日本は火山だらけなので、どこかで似たような噴火が起こる可能性があります。地震についてのルポは多いですが、火山についてのそれは少ないので、興味深かったです。
三宅島住民は、地区ごとにいさかいがあったり、避難を渋ったり、決して善人ではありません。それでも避難先で団結して頑張るなど、強さを見せることもあります。
人間は強い、弱いの二択で暮らしているわけではなく、状況によって強くも弱くもなるのだと感じます。
石原都知事が出てくるのがちょっと懐かしさを感じさせます。東京も全国も、あれからいろいろあったなあ、と考えてしまいました。