ブックワームのひとりごと

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『動物農場』ジョージ・オーウェル 高畠文夫 角川文庫 感想

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動物農場 (角川文庫)

 

あらすじ・概要

「荘園農場」の動物たちは豚のメージャー爺さんの唱えた「動物主義」に基づき農場から人間を追い出す。メージャー爺さん亡き後ナポレオンとスノーボールという豚が農場のリーダーとなるが、豚たちは徐々に権力に呑まれていく。やがてナポレオンがスノーボールを追い出して……。

 

おかしくも悲しい権力と支配の物語

あらすじはほぼソビエト連邦の成立を動物に置き換えただけです。しかし動物たちの描写がうまくただの風刺以上の物語を作り出しています。

権力に呑まれておかしくなっていく豚たち、それに不安を抱きつつも知恵がないからうまく反抗できない動物たち、豚の狂気を理解していながら沈黙する知恵ある動物……。

動物たちは愚かで忘れっぽくはあっても善意を知らない生き物ではありません。彼らが一度は動物主義を信じ、みんなが公平な世界を望んだのは事実なのです。そういう動物たちが豚の支配に抗えず、また支配の片棒を担いでしまうのが悲しかったです。

 

ナポレオンが粛清を行うとき、動物たちが自分から自白するのがとても不気味でした。調べてみると「モスクワ裁判」という実際にあった裁判がモデルのようです。

自白させるためにどんな拷問・脅迫が行われたのか気になりますが、知らない方が幸せだろうとも思います

 

動物農場以外の短編は、著者の過去をエッセイというか私小説というか、実体験を描いたもののようです。

ただ現地の人たちの描きかたがとても露悪的です。ビルマの人が読んだら嫌かもしれませんね。

 

本文の30%ぐらいが解説のため、その部分を評価できるかどうかで一冊の本としての評価も変わりそうです。

動物農場」自体はすでに著作権切れした作品のため、個人が翻訳して公開されています。翻訳が古くてもいい場合はこちらからどうぞ。

 

open-shelf.appspot.com

 

 

 

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