ブックワームのひとりごと

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『チェーン・スモーキング』沢木耕太郎 新潮文庫 感想 ハードボイルドで日常的なエッセイ

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チェーン・スモーキング (新潮文庫)

 

あらすじ・概要

作家の著者が日常について語る。飛行機に頻繁に乗り遅れそうになること、納豆についての話、人と話したり本を読んだりしたこと……。何気ない日常から気づきを取り出してみるエッセイ。

 

相変わらず文章が上手い

相変わらず文章が上手い……という気持ちと上手い文章でしょうもないこと書いている……という気持ちが交錯しました。

実際に書いてあることは飛行機に毎回乗り遅れかけるということとか、友達と話したとか、納豆をどうやって食べるかだとか、何気ない話が多いです。

しかし著者にかかるとハードボイルドな雰囲気になるから驚きです。チェーン・スモーキングというタイトルもあいまって、たばこの匂いがしてきそうな気すらする。タイトルにあるチェーン・スモーキングは中身に関係ないんですけどね。著者はたばこを吸いません。そこがすっとぼけています。 

ひとつひとつの文章は普通なのに、組み合わせによって美しい情景が生まれてきます。不思議な手品を見ているような文体です。

 

どれも面白かったですが、私は「シナイの国からの亡命者」が好きでした。著者は「教養のためしてはならない百箇条」という項目を読みます。そのガチガチの真面目さに共感しながらも、同時に違和感を覚えます。

占いを受けた著者は、自分が「する」より「しない」で生きていたことに気づき、百箇条に対する違和感にも気づきます。

「シナイの国」に居続けると自分は干からびてしまうかもしれない、という著者の結論があざやかで、かっこよくもありました。

また他の本が読みたくなるエッセイでした。

 

 

 

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