あらすじ・概要
日本の研究者たちは、どのように「軍事研究させられる」危機に直面しているか――。政府側の思惑から、軍事研究に反対する研究者たちの活動、学問の独立のため、一般市民が何をすべきかなどをまとめた本。
嫌なことは嫌という社会を維持するには手間やお金がかかる
私は軍事的なことには詳しくないですが、「自分の研究を軍事的なことに使われたくない」という考えはあって当然のものだと思います。学者は国に従属するものではなく、研究で得た知識を市民に分け与えることこそ仕事だからです。
たとえ国からお金をもらっていたとしても嫌なことは嫌という権利は誰にでもあります。
しかし、国側があの手この手で研究者を軍事研究に携わらせようとするところはおぞましいですね。
一方で、日本という国自体が研究にかけるお金がなくなり、補助金が降りやすい軍事研究に手を染めやすくなっているという現実もあります。
研究者たちが軍事研究を拒むには市民の理解が必要です。また、研究者が国家のお金に依存せず研究できる環境も必要です。そのために学者ではない人間がお金や手間をかけられるか、問われています。
この本を読んだのは、イスラエルがモバイル端末に爆弾を仕込み、遠隔で爆破させたというニュースのせいです。このニュースで多くの技術者が怒っていました。イスラエルやレバノンだけではなく世界的に「技術」への信頼を失わせ、新しい技術に対する不安を促進すると。
軍事研究もそうで、人間を傷つける研究をしてしまうと、科学は人を豊かにするものである、人間の可能性を広げるものである、という信頼を失わせます。
戦争を阻止するのであればまずは暴力以外の手段で、というのは前提でしょう。
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