ブックワームのひとりごと

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お屋敷で働く老執事の取り返せない過ち―『日の名残り(映画)』

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日の名残り (字幕版)

今日の更新は、実写映画のほうの『日の名残り』です。

一度見たいと思っているときに、Amazonで有料レンタルなのを見つけて借りました。

 

あらすじ・概要

ドライブ旅行に出た老執事は、過去を回想し始める。ダーリントンのお屋敷で働くスティーブンス。そこにミス・ケイトンというハウスキーパーがやってくる。有能なケイトンを重用するスティーブンス。一方お屋敷では、ヨーロッパを揺るがすような国際会議が行われていた……。

 

取り返せない過ちを抱えて生きる

小説でオチがわかっている状態で見ると、スティーブンスのひとつひとつの小さな過ちに「ああ……」となります。

父親に無理をさせてしまったこと、親の死に目に会えなかったこと、主人の過ちを見て見ぬふりしたこと、そしてミス・ケイトンを引き留めなかったこと。

たくさんの「こうすればよかった」が積み重なった話でした。

このどうしようもないこと、二度と取り返せない過ちにこそ心動かされます。それは私にも取り返せない過ちがたくさんあるからでしょう。

そしてその過ちに目を閉じて、冷静なふりをするスティーブンスは非常にずるい。ずるいけれども、人間味のあるずるさで、完全には否定できません。

ティーブンスもダーリントン卿も、決して悪人ではない。悪人ではないからこそ、後悔をするんだと思います。

 

映画としては、鍵穴や丸窓など、穴から覗く構図が多かったのも印象的でした。こういう風に視野が狭いと、お屋敷の雰囲気がわかる気がします。

いい意味での「古い映画」っぽさがあって、それが作品のテーマにぴったり合っていて見ていて心地よかったです。

場面の切り替えやシーンごとの間も見やすくて、ストーリーに集中しやすかったです。

 

小説と違う点としては、ダーリントン卿の思想がかなり最初のほうからわかること、伏線がわかりやすいこと、逆にスティーブンスの「後悔」がはっきり描かれないことです。

この辺は映画としての魅力や、初見の人にわかりやすくすることを優先した改編かな。

 

まとめ

小説も好きですが、映画も面白かったです。いい実写化でした。

小説がとっつきにくいという人は、こちらから見てみてほしいです。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

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日の名残り (字幕版)

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小説版の記事はこちら。

honkuimusi.hatenablog.com