著者の藤村シシンさんはTwitterで「古代ギリシャの人」として有名。
その愉快な活動はTogetterにまとめられているので一読することをおすすめします。
書籍概要
「白亜の神殿、青い海」そんなイメージがある古代ギリシャの文明。しかし神殿は極彩色で塗られており、古代ギリシャ人たちはもともとは海を知りませんでした。過去の人間の「後付け設定」を脇に置き、リアルな古代ギリシャを見つめる入門書。
とても誠実な入門書
かなり初歩的なところから解説しており、そもそも古代ギリシャについて知っている人は物足りなく感じるところもあるかもしれません。
しかしこの本が他の入門書と一線を画すところは、参考資料がきっちり載っているところです。神話を引用する場合も、どこの資料からとったかを表記しています。
その辺の適当な歴史入門書をめくったとき、「出典は煩雑なので省略する」と書かれてあってむかついたことがあるので、それに比べるとこの本は非常に誠実です。
アカデミックな意味での信用を本に持たせたうえで、初心者向けに書かれている本はなかなかありません。
巻末には、資料の中でもおすすめのものに解説がついています。参考資料を読むのが好きなので、今度チェックしておきたいです。
漂白された神話
ヨーロッパの人々が古代ギリシャ神話の二次創作をしていたことは知っていました。しかしそれによる神話のイメージの改変を「漂白された神話」というのは知らなかったです。
確かに南ヨーロッパの人って黒髪が多いのに絵に出てくるギリシャの神様は金髪でした。
改変を続けられても物語の力を持ち続けるというのはすごいことですが、古代ギリシャ人が信仰していた「公式」がわからなくなってくるわけで。研究者は二次創作と本編の区別をつけるところからまず始めるんですね……。
ギリシャ神話=二次創作人気ジャンルというたとえが的確すぎます。古代ギリシャの神々を本気で信仰している人はいないけれど、物語の中で語られ続けることによってまだ生きています。それを思うととってもロマンチックです。
まとめ
初心者向けではあるんですが、とても学問的に誠実に作られた本で好感が持てます。
参考資料の中で面白そうなものは読んでみたいですね。
私がこの本を買った古代ギリシャ展はまだ神戸市立博物館でやっているのでそちらもぜひ!