本を読んでこんなに怒ったのは久しぶりだ。
最初に行っておくと、私はベーシックインカムについて反対しているわけではないです(賛成もまだしてませんが)。だが、この本はひどすぎますね。
書籍概要
国民全員に一定のお金を支給する「ベーシックインカム(BI)」。その利点とは何か、実現可能なのか。データと計算を駆使し、ベーシックインカムの良さを主張していく本。
福祉業界に無知すぎる
この本がヤバいのは著者が福祉業界について無知、あるいは知っていても無視をしているところです。
たとえば、生活保護受給者に対する貧困ビジネスについて、「生活保護の金額が高いからピンハネが起こるのであり、BIであればその心配はない」と著者は言います。
ですが、そもそもそういう貧困ビジネスは、生活保護受給者は保証人がいない、お金の管理ができないという側面もあって、その側面を論じずに、BIがあれば大丈夫と言うのは頭がお花畑すぎます。
繰り返すけれどベーシックインカムについて反対しているわけではないです。ただ、助けるべき人々の実情についてきちんと論じずして、何が福祉国家、何がベーシックインカムですか?
あと地味に、他の学問を暗に馬鹿にしているのがひどい。
私たちの社会は、優れたミュージシャン、アーティスト、アスリートを欲していると私は思う。(哲学者や詩人を欲しているかどうかは、私にはわからない)(P155)
哲学はあらゆる学問の祖だし、さっき褒めてた音楽のアーティストだって詩人なんですけど……。
自分の分野以外に興味ない人なんだろうなと思います。
ベーシックインカムの利点
そういう怒りは一旦置いておいて、確かに参考になる部分もありました。
最低時給を上げると失業率が上がるという意見もなるほどなあと思います。豊かになる=給料が上がるではないですよね。給料が上がっても、同時に物価が上がるとそんなに特ではないし。
それから、確かに今の福祉システムは複雑怪奇すぎるので、BIによって楽になる部分も多いだろうなとは思います。受け取るほうもなかなか面倒ですし。この人は政府側のコストしか論じてないのがどうかと思うけど……。
個人的には怒りを覚えたけれども、ひとつの意見として受け止めるべき部分もありました。
まとめ
福祉業界に対する理解のなさがヤバかったけれど、意見としては面白い部分もありました。
次に読むならもう少し、その辺を論じた本がいいですね。
ベーシック・インカム - 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)
- 作者: 原田泰
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2015/02/24
- メディア: 新書
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