ブックワームのひとりごと

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父親が語るシベリア抑留―おざわゆき『凍りの掌 シベリア抑留記』

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凍りの掌

今日の更新は、おざわゆき『凍りの手』です。

シベリア抑留の話と聞いて気になった作品。

 

あらすじ

著者は父のシベリア抑留の話を漫画にしようと、聞き取りを始める。学徒出陣の対象者として満州に向かった著者の父は、終戦後ロシア軍にシベリアに連れていかれる。そこで想像を絶する強制労働が課せられた……。

 

「思想」という名の権力に振り回される人々

世知辛いなあと思ったのが、軍の時代の上官が部屋の中でちんたらしており、下っ端が地獄のような強制労働をしていたことです。

戦争が終わろうと、別の場所に行こうと旧時代の階級を引きずっている。その現実が虚しかったです。

その後、ソ連による共産主義教育により、さぼっていた上官が糾弾され、リンチに遭います。

なんらかの報いがあったほうがいいとは思ってましたがこういう形だとそれはそれで嫌だな……。

戦争がだめなのは、ちゃんと頑張ってる人が普通に報われないというのもありますよね。

 

それから、シベリア抑留者が帰ってから「アカ(共産主義者)」として警戒されていたのは知らなかったです。

共産主義教育で実際そうなっている人もいるし、ダモイ(帰国)のために共産主義者のふりをしなければいけなかったので、根拠のない疑いというわけではないんですよね……。

しかし死ぬような思いをして帰ってきて、いきなりそういう疑いをかけられるのは不快でしょうね。

戦争から戦後にかけて、多くの人が思想の皮をかぶった暴力のとばっちりを受けていたんだなと思います。シベリア抑留もその一つですね。

 

絵柄もシンプルだけど、迫力があってよかったです。

ゆるい絵のようでいて、ぎょっとする生々しさがありました。このテーマに合っていると思います。

 

まとめ

 シベリア抑留について知れてよかったです。

やっぱり戦争については知らないことがたくさんあるなあ。

凍りの掌

凍りの掌

 
新装版 凍りの掌 シベリア抑留記 (KCデラックス)

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