今日の更新は、ジョナサン・ストラウド『バーティミアス プトレマイオスの門 下』です。
今までの記事はこちら。
性格の悪い少年が妖霊を召喚して秘宝を盗む―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス サマルカンドの秘宝 上』
かっこいい危機と自業自得な危機と―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス サマルカンドの秘宝 中』
人間を助けてしまうバーティミアスが愛しい―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス サマルカンドの秘宝 下』
ふたたび呼びだされたバーティミアス―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス ゴーレムの目 上』
魔術都市プラハとグラッドストーンの墓泥棒―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス ゴーレムの目 中』
本物の嫌な奴になった主人公ナサニエル―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス ゴーレムの目 下』
疲れた妖霊、いやいや魔術師に従う―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス プトレマイオスの門 上』
自分がクズだと気づいた魔術師マンドレイク―ジョナサン・ストラウド『バーティミアス プトレマイオスの門 中』
あらすじ・書籍概要
妖霊に体を乗っ取られた魔術師たちによってロンドンは大混乱に陥った。このままでは街が壊滅してしまう。バーティミアスの助けを借りるため、キティは異世界に赴く。そこで知った。バーティミアスの過去とは……。
名前を取り戻したナサニエルの奮闘
名前を取り戻してからのナサニエルのガッツがすごいです。でも1巻のことを考えると、こっちが本性なんでしょうね。
思えばこの作品では「名前」が非常に大きなキーになっています。バーティミアスは名前によって隷属関係に縛られ、ナサニエルはバーティミアスに本名がばれたことで不安定でありながら特殊な関係を妖霊と結びます。一方で、ナサニエルからジョン・マンドレイクになった彼は、子どものころの良心を忘れ、権謀術数が入り混じる魔術師の世界で出世していきます。
そのナサニエルが本当の意味で「自分の良心」を取り戻したとき、自ら「ナサニエル」と名乗ります。その構造はとてもかっこいい!
そして異世界まで追いかけてきたキティに頼まれたとはいえ、そんなナサニエルを助けてしまうバーティミアスは本当に義理堅いです。
異世界で対話するバーティミアスとキティのシーンは、幻想的でありながら優しくて、この場面を読み終わるのがもったいなかったです。長居すると危険な場所らしいので無理だれど。
おそらくバーティミアスが人間の良心に興味を持ったのは、プトレマイオスがきっかけなのでしょう。だから、その片鱗を見せる人間には少し優しいです。憎まれ口は叩くけれど。
そして苦みと切なさのあるエンディング。この終わり方は子どものころは不満に思った記憶がありますが、今読み返してみるとこれしかなかったんだなと思います。これでふたりの主従関係にエンドマークがつきました。彼らが本当の意味で対等になるためには、この結末がベストでした。
まとめ
内容をいい感じに忘れていたので楽しめました。また、忘れたころに読み返したいです。
思い出補正をかけているんじゃないかな? と思っていましたが、大人になって読んでも十分面白かったです。やっぱりこのシリーズはすごい。
プトレマイオスの門 下 バーティミアス9 (静山社ペガサス文庫)
- 作者: ジョナサンストラウド,金原瑞人,松山美保
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 2019/02/13
- メディア: 新書
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