ブックワームのひとりごと

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幼馴染の死と、素直にならなかった罪を償うということ―夜野せせり『君が残した青をあつめて』

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君が残した青をあつめて (スターツ出版文庫)

今日の更新は、夜野せせり『君が残した青をあつめて』です。

 

あらすじ・書籍概要

幼馴染の果歩、苑子、ハル。三人が14歳のとき、ハルと苑子が付き合いだして果歩は意地悪な一言を放ってしまう。次の日、苑子は事故で死んでしまった。果歩とハルは、高校生になっても苑子の死から立ち直れないでいた。

 

終盤の心理描写の爆発が最高

死によって一角が欠けた三角関係、登場する当て馬、亡くなった人に囚われるふたり、と基本的に私の予想通りに進む話でした。しかし、終盤の感情の爆発はだからこそ美しかったです。

ハルと果歩は、自分の本当の気持ちを見つめなおすことで、苑子の死を受け入れました。自分が何を望んでいるかはっきりさせないかぎり、「他人のために」行動することも難しいです。

苑子が死んだのは果歩のせいでもハルのせいでもないけれど、14歳のときから自分に素直にならなかったことは罪でした。その罪に向き合うことによって、初めて二人は苑子を弔えたのだと思います。

 

苑子以外にもこの作品には死と別れが満ちています。一世一代の告白をしたのに振られるキャラや、重い病に侵されるある人物、ハルの離婚した父親などなど。二度と元に戻らない関係性が痛いほど重かったです。

あらゆることに取り返しはつきませんが、それでも前を向いて進んでいくしかないハルと果歩を見ていると、寂しいような勇気づけられるような気分になりました。

 

『君が残した青をあつめて』まとめ

わりとベッタベタな話なんですが、そのド直球な展開と終盤の怒涛の心理描写がよかったです。

友人の死と向き合い、罪を自覚し、それでも生きていく物語でした。

渚くんをお兄ちゃんとは呼ばない ~ 絶対ないしょの恋の作戦 ~ (集英社みらい文庫)

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