今日の更新は、絲山秋子『絲的ココロエ―「気の持ちよう」では治せない』です。
あらすじ・概要
双極性障害(躁うつ病)Ⅰ型と長く付き合ってきた著者。現在は感情の起伏をある程度コントロールできている。著者なりに起伏を小さくする工夫や、病気で感じた世の中の生きづらさなどを語るエッセイ集。
生きづらさを言語化するのが上手い
メインの双極性障害の話より、世の中に漠然とある「生きづらさ」を的確に言語化しているところが面白かったです。
双極性障害に興味がなかった人にも面白いのではないでしょうか。
逆に、双極性障害についてだけ知りたいという人向けではないかもしれません。
特に「わかる!」となったのは女性性の否定の話。
著者は比較的男性的な容姿をしており、その結果「自分に女性的なものは似合わない」と女性的なものを遠ざけて生きてきました。
しかしうつの状態になったとき、ふとバラの香りの入浴剤や顔のパックをしてみると、意外と心が晴れることに気付きます。自分が遠ざけていたものが、思ったよりもいいものだと感じるのです。
「らしくない」ことに対するコンプレックスについて、著者はこう述べます。
問題は悪い評価をこころのなかで性的な羞恥心と結び付けてしまうことなのである。相手の言葉を何倍、何十倍のダメージとして受け止めてしまうのだ。性的な羞恥心からくる罪悪感を払拭するのは実に難しい。
(P52)
こういう、本当はいいものなのに、「らしくない」と思って遠ざけているものってありますよねー。わかる! と思って大きくうなずいてしまいました。
自分の視野を狭めるとわかっているのに、無意識に遠ざけてしまうところがあります。
私もこういう「らしくない」コンプレックスから脱したい……。
その他にも、ぴったりはまるような表現が多いです。
自分がすっきりしていないことを、ああこう説明すればいいんだなと心が晴れました。すごく言語化が上手い人ですね。
『絲的ココロエ』まとめ
双極性障害の本なんですけれど、メンタルヘルスに興味がない人にも読んでほしいです。そのくらい言語化が上手い本です。
世の中のもやもやしたことをなんとか言葉にしてみたい人にはおすすめです。