今日の更新は、『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』です。
あらすじ・概要
「妻や兄弟が冷たい」「アニメグッズを捨てた母親を許せない」「理不尽な校則を変えようとして阻まれた」鴻上尚史が、俳優や劇団主催者としての経験を活かし、人生の悩みに答える。そこから見えてくる、現代日本の問題とは……。
持っている情報で最適なものを選ぶセンス
全体の感想は前作と似たようなものになってしまうのでリンクを貼っておくとして。
今回は個別の人生相談について感想を述べます。
今回最も印象的だったのは、「相談2 隠居後、孤独で寂しくてたまらず、風呂に入っていると涙が出てきます」でした。
相談者は仕事を引退し、これからはきょうだいや妻と食事をしたり旅行をしたりしようとしていたところ、彼らから拒絶されます。曰く、いつも上から目線でアドバイスしてきた兄と、今さら遊びたくないとのこと。
著者はそんな相談者に、頭から「自業自得ですよ」と言うことはしません。ただ、仕事が人生のすべてではないこと、努力してもうまく行かない人もいることを語っていきます。
そこで無理に「家族と和解すべき」ということを言わず、「対等な関係を学ぼう」と言えるところがすごいですね。実際のところ、こういう人が対等な関係を学ぶことはすごく難しいと思います。しかし、著者はあえてそれを提示して見せる。それが相談者の老後にとって一番いいことだから。
自分の持っている情報で、相談者に提供できるものは何か。そして彼にとって何がベストか。それを平易な言葉で書いているということに驚きます。
その他、個人的に好きなのは学生たちの相談で、「部長として最低な行動をとってしまう」「学校の校則を変えようとして失敗した」「校則を破ったらみんながそうするようになった」など、リアルな学生の声を聞けるのが面白かったです。
なおかつ、著者はそんな若者たちにも古い考えを押し付けず、大人と変わらない態度で丁寧に相談に答えているところが好感度高いです。
一作目と変わらない面白さで買ってよかったです。