今日の更新は、『MIU404』です。
あらすじ・概要
事件を24時間以内に捜査し他の捜査課に手渡す「機動捜査隊」。その4番目であり臨時の部隊にいる志摩は、奥多摩からやってきた伊吹とバディを組むことになる。直観と運動能力も優れるものの、感情的で破天荒な伊吹に志摩は手を焼く。しかし、事件を乗り越えるうちに、ふたりはバディとして成長していく。
返歌であり対比でもある物語
Amazonプライムで『アンナチュラル』を並行しながら見ていたんですが、なるほどこれは脚本家自身による『アンナチュラル』へのアンサーソングであり、価値観のアップデート版であり、対になるべき作品なのだと思いました。
『アンナチュラル』では「法の秩序(三澄)VS被害者の感情(中堂)」という対立があったんですが、MIUはそこからもう少し踏み込んで、「なぜ法の秩序に乗っ取って犯罪者を捕まえなければならないのか」という話でした。
被害者と加害者がはっきり区分けされていた『アンナチュラル』とは違って、『MIU404』ではその境界線はかなりあいまいになっています。犯罪に手を染めた人間は、その前に誰かに虐げられ、騙されていることがほとんどでした。
犯罪をする人間としない人間に明快な境界線はない。あるのは引き返すチャンスが多いか、少ないか。『MIU404』は引き返すチャンスが少なかった人間の物語なんですよね。
もちろん最後に犯罪をする・しないを決めるのは本人なのですが、それでもチャンスが多いか少ないかによって罪は変わります。だからこそ警察が捜査をして、法の裁きをする必要があります。
1話ごとのストーリーにも、『アンナチュラル』で描けなかった救いを描くという気概が感じられました。
『アンナチュラル』の7話、「死亡遊戯」で、三澄が生配信で謎解きをしたときに「子どもの権利は?」とちょっと怖くなったんですよね。これを言うと怒られるんですがいじめっ子側にも普通に人権はあるし、誹謗中傷を受けて傷つくのは本人だけではないんですよね。あの高校の子どもたち、あの配信のあとかなり苦労したんじゃないでしょうか。
『MIU404』においては、バシリカ高校の陸上部の子たちが『アンナチュラル』7話のアンサーだったのだろうなと思います。彼らは虚偽の110番という罪を犯し、ネットで誹謗中傷の嵐に遭いますが、登場人物の大人たちは基本的に彼らを守る方向へ動きます。
その他にも、「死にたがりの手紙」で殺された家出少女⇔「現在地」で手を差し伸べられた家出少女、司法解剖結果の改竄を拒んだ三澄⇔捜査結果を捏造した志摩の元相棒、と、いろいろな対比が仕込まれています。
私個人としては、『アンナチュラル』は面白いけど個人的に好きかというとちょっと……。という評価なんですが、『MIU404』を見て、ああこの脚本家&スタッフは『アンナチュラル』で描き切れなかったことに自覚的なんだなあと思って好感度が上がりました。
私は「いつもの」ではなく常に作品をアップデートし続ける創作者が好きです。まあその結果趣味から離れちゃうこともあるにはあるんだけど、それでも「今」だからこそ作れるものを作る作者の方が好き。
久しぶりに地上波放送でドラマを全話完走して、毎週楽しかったです。お疲れさまでした。