あらすじ・概要
韓国ドラマのストーリーには、フェミニズムやジェンダー観の変遷が現れている。韓流ドラマの大ファンの著者が、韓流ドラマの歴史を追いながら、韓国の女性たちにとっての韓流ドラマを語る。
生き生きとした韓国ドラマとジェンダーの批評
何よりよかったのは、著者の韓流ドラマを語るその文章が生き生きとしていたところです。「この作品を見てみたいな」と思うものばかりです。著者は本当に韓流ドラマが好きなのだろうなと思わせてくれます。
批評ではあるので、作品を批判するくだりもありますが、著者は韓流ドラマの文化自体は肯定的に捉えています。
本の本題である、韓流ドラマとジェンダーの関係も面白かったです。韓流ドラマはやたらとドロドロしていますが、そのドロドロは、韓国の家族制度の影響を受けています。
女性蔑視や婚外子差別、学歴社会や教育ママ、母性への過度な信仰などなど。
中には古い価値観の作品もありますが、全否定をせず、「当時の人には必要な価値観だったのだ」とすることにちょっとほっとしました。
この本に出てくる母性信仰にしても、女性に自由がなく、働いたり離婚したりすることが困難だった時代は、女性も自らそういう思想にすがらなければならなかったでしょう。
そういう状況で「母親である自分が報われる話が見たい」となるのは仕方ないと思います。
本題とは関係ないのですが、「ヨシエ」でなく「ヨンエ」と韓国語読みで名乗っているように、著者は朝鮮半島にルーツがある人のようです。しつこく読みを書いても「ヨンエ」と呼んでもらえない話など、日常のエピソードも面白かったです。