あらすじ・概要
作家の雨宮処凛は、学生のころからいじめに遭い、バンギャになっても美大志望の少女になってもどこか名状しがたい生きづらさを感じていた。作者自身の半生を振り返りながら、「ロストジェネレーション=失われた時代に生きた世代」の息苦しさを語っていく。
「若気の至り」から安定した生活に戻れない社会
これはちょっとタイトルが悪いですね。『ロスジェネはこう生きてきた』だとふわっとした世代論をイメージしてしまいます。『ロスジェネに生まれてバンギャから右翼になりました~平成をしんどく駆け抜けたけどもっと生き延びたい~』ぐらいのあらすじがタイトルぐらいの勢いでよかった気がします。
著者は右翼活動にはまっていた過去のやらかしについても正直に書いていて、こっちが共感性羞恥や自分の過去のやらかしのフラッシュバックで恥ずかしくなってきます。でもそういうことをせきららに語っているからこそこの本には価値があります。
著者の人生における決断は間違いが多いし、決して思慮深いとは言えません。でも若者にとってはよくあるといえばよくあります。
若い人というのは愚かなもので、そういう「若気の至り」から安定した生活に戻るチャンスがないのも問題だと思うんですよね。
著者の意見に全面的に同意できるわけではないです。たとえば引きこもりや自傷癖のある人間が政治活動することについては「自己肯定感が上がらないまま政治活動して大丈夫か……?」という気分になりますし。
ただ、常に迷走し、バンギャをやったり右翼活動にはまったり、「わたしはなぜ生きづらいのか」という問いに迷い続けた人間だからこそ、語れることがあります。
普通の貧困を語る本というのは著者自身は金銭的に安定していて、権威もあることが多いです。それらの本と対比して、こういう主観が強く個人的な経験を書いた本もあっていいと感じました。