あらすじ・概要
著者には高校を辞めて以来、引きこもってゲームばかりしている弟がいる。親孝行のために彼を東京のワンルームに引き取り、社会復帰を支援することに。まずは漫画のアシスタントを頼み、履歴書に書けることを増やそうとするが、弟はやはりゲーム三昧で……。
共依存せず、同時に見放さない距離感がいい
引きこもりというシリアスで複雑な問題とは裏腹に、内容はカラッとしていて読みやすかったです。
著者は働く気がない、ゲームさえできればそれでいい、という弟の在り方を頭ごなしには否定せず、日常生活を共にするところから始めていきます。
目の前にこの弟がいたらむかつくだろうなと思いつつ、ユーモアであふれているので読んでいても笑えるばかりであまりいらいらしません。著者自身は約束が守られないとちゃんと怒っていますが。
「自分がいなければ」と共依存に陥らず、かといって見放さないというスタンスが素晴らしい。なかなか真似できません。
アルバイトに興味を持った弟に履歴書用の写真を撮ってあげるのも上手いなーと思いました。無理に急かさず、「面接を受けるためにやるべきこと」をひとつクリアさせてあげる。距離感がすごい。
著者自身もデザイナーの道を諦めて水商売をしたり、不動産会社で働いたり、紆余曲折を得て今に至っているからこそ、弟の社会復帰を辛抱強く支援できたのでしょうね。
著者がすごく真面目な人だったら、逆にこの弟に付き合いきれなかったと思います。適度に気が抜けてて、でも言うべきことは言って、という塩梅がうまくいったのでしょう。
ニートにどう働きかけるか、という問題はわかりやすい正解がないんですが、それでもひとつの成功例として面白かったです。