あらすじ・概要
田舎でレストランをしていたオルタンスがスカウトされたのはフランスのエリゼ宮。彼女はそこで大統領のために食事を作ることになった。女性でありよそ者であるオルタンスは、すでにいる料理人たちに薄遇される。オルタンスは大統領と信頼関係を結ぶが、仕事には少しずつゆがみが出始めていた。
揺るがぬ思想を持つゆえに挫折する女性
序盤は「フランスの家庭料理をべた褒めする国粋主義的映画なのか?」と思ってあまり入り込めませんでした。とにかくオルタンスは美味しいフランス料理を賛美し、それに対立する意見などすべて敵としているように見えます。
しかし私のような豪華な料理を知らない人間としては、そんなお高い食材を使っておいて何が「家庭料理」だと思います。
オルタンスも大統領もすごくスノッブ的に見えて、好きになれませんでした。
しかし大統領の食事制限、湯水のように金を使い続けたことをとがめられたことで、仕事が上手くいかなくなってきた段階で少し見方が変わりました。
これはべた褒め映画ではなく、栄光と挫折を描いた作品なのかもしれない、と。
オルタンスははっきり「こうあるべき」という強い意志を持っている女性だけれど、だからといってうまく行くとは限りません。むしろその強い意志が足を引っ張り挫折してしまうこともあります。
最後まで見るとオルタンスのことを「嫌な女」とだけは思えなくなっていました。
メインストーリーと並行してオルタンスの現在が挿入されます。彼女は南極調査隊の料理人として働いていました。フランスから遠く離れたいと思った彼女の心情をいろいろ考えてしまうところがあります。
前述したとおりちょっとお高く留まっている雰囲気はあるけどちゃんと画面はきれいです。ちょっとブルーがかった色味の中で、食材もちゃんとおいしそうに見えます。
なんだかんだ最後まで見てよかったと思える作品でした。