あらすじ・概要
家庭の事情で母と弟と引っ越してきた越野ハルカは、弟のサトルが未来を言い当てるような言動をしていることに気付く。この町には、タマナヒメという予言をする女性の伝説があるらしい。タマナヒメについて調べ始めたハルカは、大人たちの思惑と町に宿る闇に巻き込まれていく。
何とも苦く後味の悪い結末
やりきれないような後味が悪いような、何とも独特な終わり方のミステリでした。謎が解けただけでいろんなことが解決していませんが、あえてこういう結末にしたのでしょう。
謎解きの嫌な感じを除けば、ハルカという少女が守られるのではなく誰かを守れるような、大人になっていく作品だとも言えます。でもその大人になる方法も正しかったのだろうか? という疑問も持ち上がってきて、口の中が苦くなるような作品でした。
読み進めるにつれて、ハルカは居場所がない少女なのだとわかってくるのもつらかったです。若い女の子が背負う事情じゃないよ……。それでいて、周囲の大人たちのずるさも、わかってしまうのがなんだか自己嫌悪でした。
そんなじわじわと責め苦に遭うような日常の中、三浦という教師だけがハルカを対等に扱い、尊重してくれたのが救いでした。三浦も正しい男ではないんですが、それでもハルカに安易な嘘はつきません。こういう大人がいるということが、子どもにとって救いになるんですよね。
読み終わって作品全体を振り返ると、登場人物の名前に行動や事情が反映されているのかなと思いました。遠くから来たから「ハルカ」。あることを知っているから「サトル」そしてリンカは……。リンカの名前に思い至ったときぞわっとしました。面白かったです。