ブックワームのひとりごと

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【天才でもサイコパスでもない一般人が、クローズドサークルでデスゲームをしたら】米澤穂信『インシテミル』

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インシテミル (文春文庫)

 

あらすじ・概要

べらぼうに高い時給に惹かれて、謎のアルバイトに集った男女。そこではおかしな構造の館で過ごさなければならなかった。殺害を肯定するようなルール、探偵や助手というロールを演じると報酬が上がるシステム。やがて第一の殺人が起こり、デスゲームが幕を開ける。

 

デスゲームシステムのポンコツさを感じる

デスゲームだのクローズドサークルだの言いつつ、展開はかなりトンチキで、ミステリへの風刺を感じさせる描写も多いです。

デスゲームが始まった当初みんながお互いの顔を覚えられなかったり、偶然に近い殺人が起きたり、設定されたルールに抜け穴があったり。

そして、ほとんどのキャラクターが悪人になりきれずに、殺人にそこそこためらいがあります。

主人公は「探偵」ではありますが、その探偵としての役目を果たしているかというとちょっと疑問が残るところもあります。

しかし、その辺の一般人を集めてデスゲームをしたら、当然こうなるでしょう。

逆に、天才やサイコパスが紛れ込んで、エンタメ的に大盛り上がりするデスゲームなんてそうそう起こりえないのだと思います。

 

デスゲームをテーマにするだけで悪趣味ではあるんですが、そこから一歩踏み込んで、「デスゲームなら当然こうするだろう」という展開を否定してのけます。固定観念を壊してくれます。

ブラックなジョークにあふれた作品でした。