ブックワームのひとりごと

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平成不況の中、リストラ代行会社の男が今日も首を切る―垣根涼介『君たちに明日はない』

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君たちに明日はない(新潮文庫)

 

あらすじ・概要

時は平成不況の時代。リストラを代行している会社に勤める村上真介は、今日もリストラ候補と面接している。そんな中、建材会社のリストラ候補だった年上の女性陽子に興味を持ち、いい仲になる。真介はリストラ代行業務をしながら陽子とデートを重ねるのだが……。

 

平成の空気感がリアル

かなり前の作品なだけあって、セクハラ発言や「女はこう」「男はこう」みたいな発言がぽんぽん飛び出します。そういうのが気になる人はあまり読まない方がいいかも。

 

しかしながら、この作品はすごく面白かったです。それは、「平成不況の時代」の空気感をよく表していたからです。

平成は真っただ中のときは「未来」「最先端」みたいなノリだったけれど、実態は結構どろどろしてていいかげんで、きれいなのは上っ面にすぎませんでした。そういう空気感を、「他の会社にリストラを代行してもらう」という行為で表しています。

 

真介に首を切られるキャラクターたちも、「あの時代にいそうな人たち」で、細かく設定や性格が作り込まれています。この人の人生これからどうなるの? というどきどき感があってつい先へ先へと読んでしまいます。

ある意味「賢い俺と愚かな周囲」みたいな話なんですが、主人公が周りに振り回される描写も結構あるのであまりむかつかずに済みます。

 

ノリが古いのは本当なので、自分より若い人にはすすめないですが、平成のリアリティが強くて面白かったです。