ブックワームのひとりごと

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食いしん坊の妃が、略奪婚させられてそこで生きる道を探す―喜咲冬子『流転の貴妃 或いは塞外の女王』

流転の貴妃 或いは塞外の女王 (集英社オレンジ文庫)

 

あらすじ・概要

皇帝の貴妃の中で一番の不美人だったことから、異民族の王に外交の道具として嫁ぐことになった柴紅玉。しかしその婚礼へと向かう途中で襲われ、略奪された先の氏族で「妻」になるはめになる。そこでめあわせられたのは、アマルという年下の少年だった。

 

ヒロインのキャラクターがいい

中華風の異世界というより、国の位置関係や言葉、万里の長城のような壁など現実に近い要素が出てくるので、パラレルワールドっぽさがあります。一方で現実ではありえない髪の毛の色も出てくるので、やっぱりこの話はファンタジーなんだなあと。

 

世界観はかなり過酷で古くさく、主人公は早々に略奪婚(しかも周囲はそれが悪いと思ってない)されるし、奴隷もごろごろいます。女性は財産であり男の思惑によってやりとりされ、戦士を貴ぶ社会なので老いて役に立たなくなれば大事に扱ってもらえません。

 

そんな容赦のない「昔の倫理」の中にありながら、ストーリーを現代的に感じるのはひとえに主人公のキャラクターゆえでしょう。

主人公は大変な食いしん坊で、話が進むほどに太っていきます。太っている主人公が痩せるのはよくあるけど太るんだ!?

しかも商人の娘でお金に詳しく、後宮では自らそろばんを叩いて商売をしていました。この説明をする導入だけでも面白いです。

ある意味少女小説のアンチテーゼ的なヒロインで、見た目は平凡とか言いながらかわいい挿絵にされたりはしないし、男よりも自分のやりたいことを選ぶし、男に頼るのも自分で自分の居場所を勝ち取ろうとします。

「女性受けしやすいヒロイン」を安易に目指さず、きちんと背景や個性を書いた上で魅力的に書いているのがいい。

 

紅玉の夫であるアマルが、都合のいい存在過ぎないかという問題はあるんですが、恋愛ものではなくひとりの女性が戦いあがいていく様がメインというならまあありかな。

カップリング的な萌えはなかった。面白いけど。

その分あまり恋愛に興味がない人にも読みやすいのではないかと思います。