あらすじ・概要
体のどこかが悪い、知的に遅れがある、発達に遅れがある……。さまざまな面から子どもたちを教育から遠ざける「障害」。障害のある子どもたちにも教育に参加してもらい、成長する権利を保障するためにはどうすればいいのか。障害者教育の現場の問題とこれからを考える。
インクルーシヴという言葉の危険性
私が障害者教育の話に興味があるのもあって、結構知っていることが多く、新鮮味はない本でした。
ただ、私が個人的に不満に思っていることを的確に言葉で表しているくだりがあって読んですっきりしました。
特に「インクルーシヴ」と言う言葉の危険性、言葉とは裏腹の排他性について述べられていたところは「そうそうそれなんだよ!」と同意してしまいました。
障害者と健常者が関わり合って生きていくこと自体は悪いことではないのですが、インクルーシヴという言葉のもとに雑に障害者と健常者の社会を混ぜてしまうと、マイノリティである障害者がマジョリティの中疎外感を覚え、孤立してしまう事態になりかねません。
障害者同士でコミュニティを作り、マイノリティがマジョリティになる場所の存在を許しておかないと、障害者の権利は保てません。
その上で「障害者と健常者が関わり合う場所」を別に作ればいいと思います。
その他にも支援学校で人手や施設が足らないこと、自立支援法で重度の障害者がサービスを減らす羽目になっていること、いろいろな問題が指摘されています。
しかしどの問題も結局は「社会に、障害者に割くようなお金や心理的な余裕がない」というところに帰結してしまう気がします。
余裕がないことにどう立ち向かえばいいのかわかりません。せめてこういう本を紹介することで、ちょっとでも他の人が障害者の権利に興味を持ってくれればいいのですが。