ブックワームのひとりごと

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「映え」を意識しすぎて思想的にはガバガバ―『長崎の新聞配達』

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あらすじ・概要

戦後の日本・長崎にやってきて、とある被爆した郵便局員谷口と出会い、その経験を本にしたためたピーター・タウンゼント。タウンゼントの娘イザベル・タウンゼントは、谷口の死後長崎を訪れ、父親が記録した谷口の被爆体験をなぞっていく。

 

過去の人間の努力に乗っかってキラキラした映画を作るな

良いと思った部分も少しはありましたが、全体的には駄作でした。

全体的に意味のない「映え」や「ノスタルジー」的な描写が多く、原爆の被害を受けた人間の切実さ、怒りがまったく伝わってこなかったです。

「美しい日常を壊した戦争という惨禍」のつもりなのかもしれませんが、そういう文脈としてもいまいちでした。

インスタグラムに雑に載ってそう。

 

私は被爆者として活動し、非核化を訴えていた谷口さんのことをよく知らなかったので、情報としては新しく新鮮でした。しかしそれを主張したのは谷口さん自身であり、それを書きとったのはピーター・タウンゼントさんで、映画の制作陣ではないんですよね。

どうも過去の人間の努力に乗っかって、キラキラした映画を作っただけに思えます。

 

いろんな意味で恣意的なものを感じるのに、思想的には薄っぺらくガバガバの内容で、ドキュメンタリーとしてはつまらなかったです。いっそフィクションだと割り切って、きちんと「原爆という過去に対する制作陣の思想」をきっちり発表してくれればよかったのにと思います。