あらすじ・概要
昔より多様性が認められ、自由になったはずなのに、なぜ現代社会は生きづらいのか……。現代の社会学者や過去の哲学者の著作を紐解き、現代社会の「断絶」の解説に挑む。思索することで見えてきた、政治への不信感や虚無感の正体とは。
結局断絶って何だったのよ
現代は「断絶」の時代だと言われますが、では一体その断絶とはどういうものなのか、ということを詳しく話した本です。
個人の自由が強調され、「私らしさ」が強調されればされるほど、人生の「正解」が失われていきます。そんな中で、人々は政治的連帯をす手段を失ってしまっています。
しかし時計の針を元に戻し、多様性のない社会へ帰ることもできません。今まで虐げられた人がマジョリティに踏みつけられたのも確かだからです。
本の中ほどには、今までの日本の政治的失敗とは何だったのかということが描かれています。当時有権者だった身としてはつらい部分もあります。そして、漠然としたスピリチュアルなナショナリズムのやっかいさも感じました。
民主主義を維持するには、今こそ「社会のため」という視点が必要になってくると著者は説きます。確かに、みんなが自分のことだけ考えていても社会は回りませんからね。
でもそれと「自分はこうしたい」という願望とのバランスを取るのが大変なのでしょう。
いろいろ過酷な現実を突き付けてくる本ではありますが、著者の語り口が暗くなりすぎないところが助かりました。あまり絶望的なことばかり言われるとつらいだけで前向きな情報を取り出す気がなくなってきます。
同じ著者の『未来をはじめる』もわりと前向きでしたからね。
抽象的でわかりにくい部分もあり、すべてを理解したわけではありませんが、読んでよかったです。