ブックワームのひとりごと

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「政治をやる障害者」が語る戦略的にマイノリティ向け制度を作る方法―伊藤芳浩『マイノリティ・マーケティング――少数者が社会を変える』

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マイノリティ・マーケティング ──少数者が社会を変える (ちくま新書)

 

あらすじ・概要

聴覚障害者として、NPO「インフォメーションギャップバスター」で活動してきた著者。この団体は聴覚障害者向けの電話リレーサービスや東京オリンピック開閉会式におけるテレビ放送の手話通訳の導入を実現させてきた。300人に1人の聴覚障害者が、自分たちのための政策を実現していくための方法とは……。

 

マイノリティが政治に参加するには

「一般の人も政治に参加すべし」という主張がなされる中、実際どこから始めていいのかわからない人も多いと思うんですが、これはどうやって政治を始めればいいのか悩んでいる人にはおすすめの本です。

著者は聴覚障害者であり、300人に1人の超マイノリティですが、交渉や、他人との協力を経て、自分たちのための政策を実現させていきます。

その過程は決してキラキラしたものではなく、メディアを利用したり、政治家に会いまくったり、署名やパブリックコメントを集めたりと、地道な行為が多いです。

しかし地道であるからこそ、「自分にもできることがあるかもしれない」と思える内容になっています。

 

メディアを利用するのも直接困りごとを訴えるのも、結局「人にはよい行いをしたいという欲求があるので、そこに訴えていくことが大事」という結論に結びつきます。

「よい行いをしたいという欲求」に訴えるのは一見ずるいように見えるかもしれないけれど、それでも無理やり言うことを聞かせるよりはよほどましな行為だし、それで世の中のルールを変えられるならいいじゃん、という割り切りも必要なのかもしれません。

私は潔癖なので世論を作ることに対してはすに構えていましたが、そういう態度はあまり政治的にはいいことではないのかも……と思いました。