ブックワームのひとりごと

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【美味しい絶滅危惧種のために市民ができること】海辺建三『結局、ウナギは食べていいのか問題』

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結局,ウナギは食べていいのか問題 (岩波科学ライブラリー)

 

あらすじ・概要

多くのアジア人に食されていながら、絶滅の危機に瀕しているウナギ。100年後もウナギを食べ続けるために何をすればいいのか。ウナギの科学者が、Q&A形式でウナギの疑問に答える。今までの固定観念を払拭し、科学的な観点からウナギを守る方法を模索する。

 

ウナギの科学者がウナギへの思い込みを斬る

ウナギの研究者がウナギに対する思い込みをばっさばっさと斬っていって気持ちがよかったです。斬ると言っても「科学的な根拠は今のところない」とか「そういうデータは今はない」とかそういうのですけど。

ちゃんと断言をしないところが科学者です。

 

著者は、「消費者がウナギを食べないこと」よりも「違法行為が常態化しているウナギビジネスにメスを入れること」が重要だと説きます。

ウナギ業界は、ウナギの稚魚であるシラスウナギの密漁を黙認し、違法なウナギを人々に提供し続けています。

しかし、ウナギ業界そのものが、政治や地域社会に深く関わり、漁獲制限をした上で合法的にウナギを獲るシステムが作りにくくなっています。

また、科学的な根拠もないのに、「ウナギにいいから」となされる行動も著者は批判しています。

特に、ウナギの放流は、それがウナギを増やす科学的な根拠がないにも関わらず自治体が主体になってなされています。大量のウナギの放流によって生態系のバランスが乱れたり、ウナギの性別が片寄ったりして、メリットよりデメリットの方が大きいようです。

 

著者は市民が正しいウナギの知識を得て、合法的にシラスウナギを入手して育てたウナギを売るよう、ウナギ業界に求めていくことが重要だと説きます。

科学者は政治に関わるべきではないと言う人もいますが、守りたい自然に利権が関わってくるとそうも言っていられません。

100年後もウナギをおいしく食べて、なおかつウナギを絶滅させない方法について、市民ができることを書いた本でした。