あらすじ・概要
既存の暴力団の上下関係にとらわれず、集合と離散を繰り返す犯罪組織、半グレ。その犯罪の手口や、組織のなりたちとは。NHKのドキュメンタリーを文字にまとめ、半グレたちのその後を加筆した新書。
暴力団とは違う分裂と集合を繰り返す犯罪組織
さらっと読めますが、本としてはまとまった内容で面白かったです。
半グレの特徴は、暴力団の上下関係に当てはまらず、分裂と集合を繰り返すこと。ゆえに幹部や犯罪の発案者を検挙することが難しいです。
また、犯罪の仕事と正業の仕事が境界線なく混じり合い、一見すると普通の会社に見える団体も多いです。実際、反社会的な仕事で稼いだお金でクリーンな仕事を起業する人もいるようです。
印象的だったのは、中国残留孤児の子息が集まってできた半グレ組織、「チャイニーズドラゴン」の創始に関わった人のインタビューです。
中国残留孤児の息子として日本にやってきた彼は、差別や偏見を苦にして同じ残留孤児の子どもたちとつるみ、その結果半グレとして成長していくことになります。
やったことが許されるわけではないですが、その語りには悲哀を感じました。
しかし、チャイニーズドラゴンは日本人も巻き込み、未だにいくつも枝分かれして半グレ組織として活動しているようです。もう異なるルーツを持つ人間の悲哀、という言葉で語れるような組織ではなくなってしまいました。この事実も恐ろしいです。
貧困や差別をきっかけに半グレ組織に関わる人もいる一方で、能力や生まれに恵まれているのに、犯罪に関わってしまう人もいます。女の子たちを風俗に沈めて貢がせた、京都の大学生たちもそうです。
しかし彼らも、半グレ組織に「お金を稼ぐことは素晴らしいことだ」と洗脳され、倫理観を狂わされていたことがわかります。
最近闇バイトに手を出す若者のニュースが増えていますが、若者と犯罪の関係を知る上でも興味深い本です。