あらすじ・概要
戦争中に描かれた『大東亜戦皇国婦女皆働之図』という絵画が保存されている。この絵は当時の女性芸術家たちの合作である。戦争による人手不足によって、女性たちにもチャンスが回ってきた。集まった女性芸術家を率いる長谷川春子は、女性芸術家の地位を上げる好機だと、制作に打ち込む。
プロパガンダとジェンダーをめぐる悲しくやるせない話
非常につらい話でした。
戦時中、物資が不足する中で、画材を手に入れるには手っ取り早くプロパガンダ絵を描いてしまうのが早かったのです。
その上、女性芸術家は周囲に侮られ、男性の作ったものと常に比較される運命にありました。
そんな時代の中、長谷川春子は「男性にも負けない作品を」と他の女性芸術家に呼びかけ、戦時中の女性たちを描いた絵を作り上げます。
絵全体から伝わってくる妙な明るさにより、何となく居心地が悪い絵です。
絵の中にはさまざまな働く女性たちが描かれています。
戦争の絵でなければ、働く女性を賛美したい、という思想は悪くなかったのかもしれません。
戦後、多くの戦争画が焼かれましたが、この絵は残っています。
もちろん歴史的な価値が高いからこそです。しかし、自分がプロパガンダに協力した過去が、いつまでも残っているのはつらいだろうなあと思います。
表現することは楽しいばかりではないですが、過去の自分の作品が自分を責める、というのは深い絶望だったでしょう。
やるせなさの残るドキュメンタリーでした。