あらすじ・概要
殺人事件を追う刑事、エーレンデュルは、同時に望まぬ妊娠をした放蕩娘のことで頭を悩ませている。殺人事件を追ううちに、そこには遺伝性の脳疾患を持つ一族が関わっていることが判明した。血と暴力の因縁が、新たな犯罪を発生させる。
視聴者にとってフェアではない映画
面白い映画ではあったんですが、登場人物が全員優生思想を否定することがないのが気になりました。これを「考えさせられる」映画として出してくるのはフェアではないと思います。
遺伝病が作品のテーマとなっていますが、「遺伝病の人もこの世界にいてもいいのでは?」とはっきり発言するキャラクターがひとりもいません。こうなると思想を誘導されている気分になります。「考えさせられる」作品であるならば、見る人が対立する意見を知ることができるようにしなければフェアではないと思います。
作品の途中でレイプによって生まれてきた子どもが登場しますが、こちらも「かわいそうな人」扱いで、レイプによって生まれた子どももここにいてよいという流れにはなりません。
確かにレイプによって生まれてくる子どもはつらいかもしれませんが、そういう人たちも幸せに生きられるように努力するのが年上の役割です。親世代がメソメソしたところで本人が幸せになるのでしょうか。具体的に愛情を注いだり受容したりするシーンをすっ飛ばしてメソメソしたところだけ見せるのは怠慢に感じます。
とはいえ演出や画面の作り方は美しく、倫理観に突っ込みがあっても面白かったです。暗い雰囲気の中でキャラクターが惑い、考えるところはよかったです。
クオリティの高い作品であるからこそ、こういう思考回路の障害児の親ばかりではないことは知ってほしいと思います。