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『統合失調症』村井俊哉 岩波新書 感想

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統合失調症 (岩波新書)

 

あらすじ・概要

精神疾患のひとつ、統合失調症。珍しくない病気でありながら、多くの人がこの病気を誤解している。まだ解明しきれていない統合失調症に関する仮説から、投薬治療、患者が社会に受け入れられるために医者ができることなど、一般の人にも役立つ情報を語る。

 

ロマンチックな物語よりも患者の益になる発信をしてほしい

序盤で、フィクションの中における統合失調症へのロマンチックな誤解をはっきり否定していて、それだけでも信頼のおける本だと思いました。

著者は、漠然とした理解をされている統合失調症への誤解を解き、統合失調症の人たちに理解のある社会になってほしいと語ります。

 

共感したのはオープンダイアローグについてのくだりでした。オープンダイアローグ(精神疾患の人が要望すれば24時間以内に精神疾患の人と対話してくれる人が数人来る治療法)のような薬を使わない治療法は、決して薬の代替にはなりません。

私もオープンダイアローグのような、精神疾患の人を孤立させないような治療を否定するわけではありません。しかし脳内の物質のバランスが崩れて症状が出ている以上、科学によって脳内の物質のバランスに介入するのが筋だと思います。

実際のところ、薬が合わない人は存在します。しかし薬に助けられて生活が可能になっている人の方がずっと多いのです。

全てを薬以外の方法で解決しようとしてしまうと、「病的な部分は、その人の本質ではない」という原則が抜け、病気への偏見が増す可能性もありえます。

 

サブカル系やメンヘラと呼ばれるコンテンツもそうですが、「病気の持つなんとなくエモっぽい部分」に興味があっても、病気そのものに興味を持ってくれる人は少ないです。

当事者だけではなく、一般の人への啓発も必要だと感じる本でした。

 

 

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