ブックワームのひとりごと

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『後宮の薬師 平安なぞとき診療日誌』小田菜摘 PHP文芸文庫 感想

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後宮の薬師 平安なぞとき診療日記 (PHP文芸文庫)

 

あらすじ・概要

大陸から来た父から薬を学んだ薬師、安瑞蓮は、腕を買われて宮中に上がる。そこで、体の不自由な皇子に出会う。皇子の身体を診ているうちに、瑞蓮は、後宮の女性たちのいざこざや嫉妬に巻き込まれていく

 

体に障害を持つ皇子をめぐる女性の悲哀

 この間紹介した。『華は天命を診る 莉国後宮女医伝』とは似たようなテーマで作者も同じですが、それでも安定した面白さでした。王道を押さえつつ、今時な題材を取り入れています。

 

 

 手前のガタイのいい金髪のキャラクターがヒーローなのかと思ったら、このキャラが主人公(女)でした。キャラデザインが攻めてますね。

主人公は父親が外国人で父から薬のことを学んだ設定です。作品の中では現代人に近い価値観を持っていますが、「ふつう」の外側から来たキャラクターとすることで、うまくバランスを取っています。

 

主題となっているのは障害を持っている子どもの立場の悪さです。皇子である朱宮は、生まれつきの病気で体が自由に動きません。まだ本人は自分の不遇を理解できるほど物を知りません。しかし朱宮の障害を巡って周囲の女性たちの悲哀と愛憎が描かれます。

母親なのに大人になれない女性、母親になることを強く望んだのに叶わなかった女性が出てきます。話を読み進めるほどやるせない気持ちになりました。

しかし、母性神話を無邪気に信じるのではなく、子どもを産んでも産まなくても、女性として、人間として成熟するわけではないというところがよかったです。