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『心を病んだ父、神さまを信じる母』ゆめの イースト・プレス 感想

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心を病んだ父、神さまを信じる母

 

あらすじ・概要

キリスト教徒の母と、気難しく扱いづらい父。やがて父は統合失調症を発症し、一家は父の妄想に悩まされることとなる。不穏で気まずい家庭の中、母は神の教えを支えに生活していた。

 

すっきり終わらないが印象的なエッセイ

すっきり終わらないコミックエッセイですが、それゆえに面白かったです。幸せ、不幸の二通りだけではなく、曖昧でグラデーションの人生を感じます。

 

著者はいわゆる宗教二世ですが、母親に強く信仰を強制されることはなかったので、両親とは違う価値観の中にいます。

本人に信心はない一方で、母親が苦労をしながらもここまでやってこれたのは、信仰のお陰かもしれないという価値観も持ち合わせています。

最近は宗教二世というと心理的虐待、マインドコントロールというところが強調されることが多いです。逆に、こういう形で宗教というものを観察できるのは多様性の点でいいかもしれません。

 

統合失調症患者として登場する、父親がなかなかダメな人でした。頭がいいのに悪い意味で理屈っぽいです。家族に迷惑をかけ、ついには精神疾患を発症してしまいます。精神疾患になるのは本人の落ち度ではないにせよ、周囲は大変だったでしょう。

作品の後半で、父親もクリスチャンになります。信仰を持っても人格は変わっていないので「よい父親になった」とは言えません。ただ妻と信仰という拠り所を共有することはいいことなのかもしれません。

 

白黒はっきりつかない作品も、これはこれで必要なのではないかと思うコミックエッセイでした。

 

 

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