ブックワームのひとりごと

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『なりゆき斎王の入内』小田菜摘 ビーズログ文庫 全9巻 感想

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なりゆき斎王の入内 ~この婚姻、陰謀なりけり~ (ビーズログ文庫)

 

あらすじ・概要

天皇の孫で一時的に斎王として暮らしていた塔子は、次期天皇である東宮の妃候補となる。熊野に帰りたい塔子は入内したくなかった……。政治と皇族をめぐる平安ラブロマンス。

 

固めの和風世界観が面白い

この作者の和風世界観ライトノベルはいくつか読んでいますが、このシリーズが一番がっちり和風でした。めちゃくちゃ漢字多いし、ちょっと見ただけではわからない単語が多いです。それでも話の筋がわかるのはすごいです。

実際日本史が専門の人が見たらまたツッコミどころあるのでしょうが、なかなかない世界観の再現度でした。読みごたえがあります。

キャラクターは実在しませんが、世界観は現実の平安時代を踏襲しています。だから「古事記」や「日本書紀」、「源氏物語」が登場します。元ネタを知っていると楽しいです。

巻末には参考資料がたくさん掲載されているので、元ネタが知りたい人にも親切です。

 

人間関係にリアリティがあって感情移入できる

内容は宮中のドタバタ劇……というよりガチの政治闘争です。

東宮と皇孫である主人公たちは、外戚になろうとしてくる摂関家の力に対抗していくために陰謀の中を綱渡りします。

明らかな暴力は少ないものの、陰謀自体はシビアなものです。作者の「悪女を書くのが好き」という言葉通り悪女もクオリティが高いです。

主人公ふたりは権力欲が薄い方ですが、やりたいことをやるためには権力が必要です。そこが結構生々しかったです。

主人公たちは善人であるものの、たまに無神経な発言をするのもリアリティがありましたね。善人で読者に寄り添うキャラクターであってもこのくらいのコミュニケーションの事故は起こります。安易に聖人君子にしなかったことは好感が持てました。

 

最終巻でみんなが協力するのが熱い

最終巻では今まで対立してきたキャラクターの協力が得られました。こういう展開はやっぱり熱いですね。

主人公と最後まで対立してきた女御も、最後まで格を落とさなかったのがよかったです。主人公の、善の女でありながらどこかネジの外れた行動も最高でしたしね。

皇族として権力闘争に巻き込まれ、そして自らも戦わなければならなかった塔子としては、「権力が最上のものではない」という結末は救いであったと思います。もちろん現実の平安時代ではこうはならないでしょうが、フィクションであれば救済を描いてもよいでしょう。

血のために陰謀や策略が張り巡らされる世界観で、主人公ふたりが現代の倫理に一歩近づく結末はよかったですね。

 

 

あと、挿絵もかなり豪華でよかったです。平安ものってどうしても描ける人が少ないと思うんですが、キャラクターみんな衣装が華やかで楽しかったです。

カラーもモノクロも上手いし、やっぱり絵がきちんと書き込まれていると嬉しいですね。

 

 

 

 

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