ブックワームのひとりごと

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『ブルーもしくはブルー』山本文緒 角川文庫 感想

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ブルーもしくはブルー (角川文庫)

 

あらすじ・概要

夫と冷え切った関係で、お互いに愛人がいる佐々木蒼子。彼女は自分にそっくりな女性、河見蒼子と出会う。彼女と話をするうちに、彼女は自分が選ばなかった相手と結婚したことがわかって……。お互いの立場を羨んだふたりの蒼子は、の立場を交換してみることにする。

 

結婚について考えさせられるサスペンス

恋愛小説というよりサスペンスでした。恐ろしい描写が多かったです。

 

河見は愛情深い一方短気なDV男です。それを知らずに河見の元に行った佐々木蒼子は衝撃を受けます。慌てて元の立場に戻ろうとしますが、河見蒼子は佐々木蒼子の立場を奪おうとしていました。

自分が乗っ取られるかもしれないという恐怖がありありと伝わってきて、非常にはらはらしました。終盤の展開は一気に読んでしまいました。

また、愛しているのに蒼子を殴ってしまう河見に恐ろしさを感じました。DVをする人の心理には、「自分がこれだけ愛しているのだから,相手も同じだけ自分に愛情を向けるべきである」という独占欲があるそうです。生々しい感情を覚えました。

ドメスティック・バイオレンス(1)親密性と暴力| コラム | 清瀬駅徒歩2分の精神科・心療内科 ふじみクリニック

 

ふたりの蒼子に共通するのは、「結婚する相手さえ違えば自分の人生は変わるのではないか」という期待です。愚かな考えではありますが、私は蒼子たちを責める気持ちにもなれません。

世の中は「素晴らしい恋愛をして結婚することが幸せだ」というメッセージで溢れています。こんな状況で、女性が恋愛関係なく自由に生きるべきという発言はなかなか受け止めてもらえません。

ふたりの蒼子は憎悪し、殺意を覚えます。この過程があったからこそお互いを受け入れることができたのかもしれません。信じていた価値観が実は間違っていたと気づくと、つらい気持ちになります。だけど価値観は変わっていい。そう思いました。

 

ふたりの蒼子は髪の長さが違うため、表紙にもそれが表現されています。かっこいい表紙でいいですね。

 

 

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