ブックワームのひとりごと

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『るん(笑)』西島伝法 集英社文庫 エセ科学やスピリチュアルがはびこる世界の病人たち

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るん(笑) (集英社文庫)

 

あらすじ・概要

スピリチュアルやエセ科学をみんなが信じるようになってしまった日本。高熱を出してひそかに薬を飲んでいる主人公は、社会に疑問を抱きながらも妻の作った奇妙な水を飲み、自らもエセ科学を実践する。非科学的な情報に流されていく社会を描いた連作短編集。

 

科学が信用されない社会で病気になる人々の物語

スピリチュアル、エセ科学、陰謀論がはびこる世界観。そこではあらゆる人が民間療法を信じ、医者や薬剤師などの科学の徒は排斥され隅に追いやられています。

短編の主人公は話の中で何らかの病気やけがを抱えますが、エセ科学、スピリチュアルがはびこる世界ではまともな医療が受けられません。怪しげな民間療法を周囲の人たちに受けながら、体調不良をごまかしていくことになります。

この世界はどこかおかしいと思いながらも、本人たちも正しい科学の知識を知らないので情報に押し流されるほかないのです。そこがホラーのようでした。

タイトルの「るん(笑)」は癌という病気が言い換えられたものです。どうしてこうなったのか……は本編を読んでみてください。

 

話の中では適切な医療を受けられず病気の人たちが亡くなっていくのに、多くの人は「この国は幸せな国だ」と信じているのが恐ろしいです。ディストピア感がすごいです。

この短編集では明確な権力者や支配者が出てこず、ただずるい人や狡猾な人がいるだけです。それが不気味でした。

 

地獄のような世界観でしたが、「病気の子どものためにお百度を踏む」など根源的で素朴な信仰形態が出てきたのは印象的でした。どこからこういう世界になってしまったのでしょうか? 

 

 

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