図書館のおすすめ本の棚にあったので借りてみた一冊です。
書籍概要
絵本作家中川洋典が、生きた牛を食肉に加工する施設を訪ね、そこで働く人たちにインタビュー。牛をさばく上でのコツ、仕事のやりがい、世間の偏見など、さまざまな観点から仕事を考えていく。
わりと普通のお仕事本
人権本として身構えてしまう人もいるかもしれませんが、内容は結構「普通」です。仕事のやりがいや、作業の中で気づいたことについて優しい言葉で書かれています。もちろん差別についての話もあります。しかしそれは決してメインというわけではありません。
しかしそれこそがこの本の肝です。屠畜のことをどこか「特別な仕事」と思っている読者のことを突き放すように、普通のことを書いていく。そこが著者の意図するところだったのかなあと。
よく考えれば漁師は差別されることがほとんどないのに、食肉加工の職人は差別されることがあります。その差を考えてみると、世間一般における「残酷さ」の定義のあいまいさに気づきます。
もっといろんな意見を聞きたかったなあ
興味深い本だとは思うんですが、不満もあります。一つは登場する職人たちの意見がわりと似ていること。たくさんの人にインタビューするのなら、もっと違う考えの人の話も聞いてみたかったです。
もう一つは、インタビューされる職人にベテランの人が多いこと。技術を習得する苦労が繰り返し語られているので、それと一緒に若い人がどんなふうに働いているのか知りたかったです。
ともあれ、「屠畜ってどんな仕事だろう」と思った人が最初に読むのにはいい本だと思います。子ども向けなので文章も簡単だし、イラストも多いです。
いい意味で肩の力を抜いて読める本だと思います。
まとめ
屠畜という知らない職業を知れて新鮮でした。
ときどき映画で不穏さをアピールするために屠畜場が出てくることがありますが、ああいうのもあんまりグロく感じなくなりそうです。
焼き肉を食べる前に。 ―絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた― (エルくらぶ)
- 作者: 中川洋典
- 出版社/メーカー: 解放出版社
- 発売日: 2016/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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