あらすじ・概要
少子高齢化により多死社会になりつつある日本。著者は葬儀会社、エンバーマー、火葬場職員など「死」にまつわる仕事のプロたちを取材。インタビューや見学によってその姿を描き出していく。死者たちに携わり、生と死の境界線で働く人にこそ見えてくる世界とは……。
グロデスクだけれどプロ意識に救われる
文章とはいえかなりリアルな死体の描写があり、怖がりな人にはおすすめしません。結構グロいです。
しかしそういうグロデスクなシーンがあっても、葬送のプロたちがきちんと死体を大切にしているエピソードが多く、嫌な感じはしなかったです。むしろ、「こんなに醜い姿になっても丁寧に扱ってくれるのか」とほっとしました。
死ぬのは恐ろしいことですが、こうしてきちんと「弔い」をしてくれる人がいるのだとわかると、少しその恐怖が薄れる気がします。なるほど、死者を弔うということはただの儀式ではないんですね。
「死」にまつわる仕事は、世の中に不可欠な仕事であるのに、いわれのない差別にさらされることもあります。本の中にもところどころ差別エピソードが出て来ます。
死は怖い、だからこそ遠ざけてしまう、という忌避感があるのかもしれませんが、真面目に働いてる人にとってははた迷惑な話ですね。
著者が奈良出身なのもあり、関西での取材が多かったです。地元民としては「あああそこね」と察してしまう部分もありました。
関西ではすべての骨を骨壺に入れないんですが、余った骨がどこへ行くのか気になっていたのでその行方がわかったのは収穫でした。
登場する人々は基本的に自分の仕事に誇りを持っている人ばかりです。あえてそういう人を選んだのか、そういう人でないと取材に応じないのかはわかりません。でも彼らの誇りを読んで、お葬式というものにちょっとポジティブな印象を持てたのは確かです。
面白かった。