いい意味で思ったのとは違う本でした。刺激的だった。
書籍概要
メールやネットがない時代、昭和初期の女学生の手紙は活発にやりとりされていた。孫が保存していた手紙道具や本文を、本の形にして紹介。その知られざる文化とは……。
×デザイン本 〇読み物
デザインの本だと思うと逆にがっかりすると思います。なぜならお手紙道具のデザイン紹介は、前半三分の一しかないからです。そのあとは実際に送られた手紙の紹介が続きます。
しかし、この手紙部分が非常に面白いです。
市ちやんお手紙下さい けれどあんまりすごいこと書いたらだめですよ
私のハートが破裂してしまいます
(このレターペーパーいみしんでしやう)
(p128)
今 居川さんと塩田さん それから滋賀さんと山内さんの二組とても熱いのよ
ひやかしておあげなさいね
二人でどこか行かれたのよ
それは知らないこと ホ……
(p122)
と、乙女たちの疑似恋愛的な手紙のやり取りが紹介されています。すごいなあ、現実にあったことなんですね……。
百合が好きな人にはたまらない内容ではないでしょうか。あんまり百合属性ない私が面白かったぐらいなので。
大正・昭和初期の手紙文化を知る
手紙の内容はぐだぐだした雑談めいたものが多くて、今と手紙の扱いの違いを感じます。
今はメールやLINEがありますが、「文字を使ってたわいもないやりとりをする」手段が手紙しかないと、こういう世界が生み出されるのだなあと感じました。
テクノロジーの進化によって使う手段は変わっていきますが、親しい人ととりとめのない話をする楽しさは、時代を超えるものなんですね。
巻末には女学生たちが使っていた隠語集もあり、その詩的な内容に驚きました。でも「KY」も100年後くらいに再発見されたら、面白い隠語扱いになるのかもしれませんね。
巻末には『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』の著者も寄稿しているので、気になる方は要チェックです。
まとめ
タイトルと内容が全く違うものでびっくりしました。
大正から昭和にかけての文化に興味がある人には、ぜひ読んでもらいたい一冊です。特に百合が好きな人は一読の価値があると思います。
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