ブックワームのひとりごと

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17人が自分の「仕事を決めたきっかけ」について語る 岩波書店編集部編『なぜ私はこの仕事を選んだのか』感想

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なぜ私はこの仕事を選んだのか (岩波ジュニア新書)

 

書籍概要

弁護士、フォトグラファー、教師など、さまざまな職業の人が「なぜその仕事を選んだのか」を子どもたちに向けて書くエッセイアンソロジー。

 

選択の偏りを感じる

エッセイとしてはどれも面白かったですが、やたらと「冒険」をしている人が多いところに偏りを感じます。

普通の勤め人も出してくれればいいと思うんですが、そういう人の中で文章が書ける人は少ないのかもしれません。

 

各話感想

「偶然のきっかけを生かして」長岡靖仁

ゲームのプロデューサー。

やりたいことを見つけられるかは運しだいだ、という言葉はなかなかシビアです。でも試行回数を増やすことで確率は上げられるということですね。

 

「『少女マンガ家ぐらし』へ」北原菜里子

少女漫画家。

「なれればいいな」でなってしまうところがすごい。でもその先にはさまざまな苦労があったんですね。

 

「学校現場からの離脱、回帰、そして新たな展開」伊藤美奈子

スクールカウンセラー

教師からカウンセラーになったことのギャップが書かれているところが面白かったです。でもちゃんと過去の経験を活かせているのは努力のたまものだろうと思います。

 

三線ひいて『ハッピーライフ』」仲本光正

三線教師、三線演奏者。

めちゃくちゃなことをしているようでいて、実は周りのことをしっかり考えている人でした。だからこそ続けていけるのでしょう。

 

「居心地がいい場所探し」北沢正和

そば打ち職人。

語り口調の文章が楽しいです。自分自身をからっぽにして、内面から生まれてくるものを大事にする、というのは芸術的な発想で素敵でした。

 

「職業としての人権擁護」小池振一郎

弁護士。

よくテレビで社会的な活動をしている弁護士が出てきますが、どういう背景があるのかはあまり考えたことがありませんでした。ほとんどボランティアのようなものなんですね。

 

「石炭かあー」徳永進

医者。

のんびりした文体とは裏腹に、何度も死に直面する医者でしか考えられないことを話していました。

この本で一番好き。

 

「『パン工房 綾』より愛をこめて」小川渉

パン屋。

それなりの年齢から脱サラして成功するのは、本人の工夫や努力がかみ合ったからでしょうね。パンおいしそうです。

 

「世界を駆けるゾ!」賀曽利隆

自転車乗り、兼ライター。

いつまでも自転車に乗っていたいために、原稿をこなしている永遠の夢追い人でした。本人の文才がなければここまで来ることはできなかったでしょうね。

 

「『デモ、シカ先生』から『シカ先生』」へ」三輪主彦

教師。

「休みが多いから」という理由で教師になったものの、勤めるうちにその面白さに目覚めていく、という展開は共感しやすいものでよかったです。

この本の中で一番普通の人生だと思います。

 

「シャッターチャンスは一回限り」中村吾郎

報道カメラマン。

被写体に対する興味関心がなければいい写真はとれない、という言葉にはなるほどなあと感じました。やっぱり心は作品に現れてしまうのでしょうね。

 

マングローブを仕事にする」向後元彦

中東でマングローブの植樹活動をする人。

説明されるだけではあまりピンとこない仕事ですが、そこに至った過程を知るととっつきやすく感じます。

 

「家業 狂言」野村万之助

狂言師

若くして米国の大学に招かれ、それをきっかけに自分の仕事について考えることができたんですね。人を教えることは自分を知ることでもあるのでしょう。

 

正倉院宝物研究から東西文化交流史へ」由水常雄

ガラス工芸研究者。

ガラス工芸をきっかけに今までとは違った学問をすることになったというのは、不思議な経歴ですね。学問のきっかけっていろいろなものがあるんですね。

 

「背中を押されるようにして」東陽一

映画監督。

ピンホールカメラの中に入ったエピソードが情景にあふれていて、映画監督らしい経験談だと思いました。

 

「科学の風土への小路」岡部昭彦

科学ジャーナリスト

科学雑誌を読んで科学知識を知る、ということを支える人がいる。雑誌はなんとなく読みがちですが、忘れてはならないことですね。

 

「何でもいい、人と違う生き方がしたかった」岡田惠和

ドラマの脚本家。

いろいろな趣味を経てきた方です。それでこそ、作品に生かすことができたのだろうなと感じました。

 

まとめ

さまざまな人の経歴が見れて面白かったです。10年以上前の本なので情報は古いでしょうが、仕事を知るきっかけとしてはいい本だと思います。