あらすじ・概要
神戸の埋め立て地、ポートアイランドに暮らしていた著者は、阪神大震災を経験する。当時の神戸の雰囲気、人々の姿を文筆家の立場から語る。被災者から見た、震災後の神戸の希望とは。
良くも悪くも当時の文章、とある文筆家の日記
良いところも悪いところもある本でした。同時に当時の人しか書けない内容で、資料としての価値が高いです。
文筆家である著者は、阪神大震災以後について詳細な日記を残していました。その日記をまとめた本です。
著者が暮らしていたのは神戸のポートアイランド周辺で、被害の少ないほうでした。文章中では食料に困った様子もありません。
少し被害が少ないだけで、こんなにも変わるのかと驚きました。
著者は、災害の被害に心を痛めると同時に、うっとりとロマンチックな感情に浸ることがあります。、それが生々しかったです。
災害時、過酷な現実を目の前にして、心が高揚して周囲が美しく見えてしまうのを災害ハネムーンと呼びます。著者もそういう状態だったのかもしれません。
再開発されたおしゃれな神戸が壊れてしまってせいせいした、という不謹慎すぎるくだりもあります。現代人の感覚からしたら言い過ぎだろうと思います。
著者は、古く、どこか泥臭く、しかし市民の生活を支えてきた町並みが消えることへの危惧を感じています。
私は神戸の人にとってはよそ者で、「おしゃれな神戸」を消費する側の人間です。しかし開発の渦中にいた人は、こんな風に感じていたのだなと思いました。
著者は気功をやっているので、話がスピリチュアルなところに及びます。現代ではエセ科学とされている内容も多いです。読んでいて突っ込みたくなりました。
EM菌なんか本当に使っている人久しぶりに見ました。
しかし論理的でエセ科学にひっかからない人だけが被災するのではありません。ある意味リアルと言えます。
これが神戸の人を代表した発言だとは思いませんが、ひとりの人物が書いたエッセイとしては面白かったです。